※インフレーションとビッグバンはどっちが先?その違いとは?

宇宙の起源といえば、「ビッグバン」と呼ばれる大爆発が起き、それによって宇宙は急激な膨張を遂げたという話は有名ですが

最近では、「インフレーション」という現象によって宇宙が膨張したということも非常に有力な説として知られるようになってきています。

ただ、この辺りがどっちが先なのかとごっちゃになってしまっている方もいるようなので説明しますと、

宇宙は、その創世の直後にインフレーションと呼ばれる期間を経て約1cmの大きさにまで膨張し、

その後、ビッグバンを経て、その果てが見えないくらいの大きさにまで瞬間的に膨張を遂げたと考えられています。

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ただ、このインフレーションも、ビッグバンも、それが起きるまでの時間は、わずか1秒にも満たない短い間の出来事であったと考えられています。

にわかには信じがたい話ですが、私たちが住んでいるこの宇宙は、1秒にも満たない間に超巨大な空間へと変貌したのです。

そこで今回の記事では、ではそのインフレーションとビッグバンとはどのような現象だったのか、その違いや、宇宙の創生から一瞬の間に起こった出来事について詳しく解説します。

目次

宇宙の誕生の瞬間について

宇宙がどのように誕生したのか、ということについてはいまだに未解明なことがほとんどですが、これまでに提唱された中で最も有力視されているのが、ビレンケンという学者によって唱えられた「無」からの創生論です。

その理論によれば、ある真空中の何もない空間に、生まれては消え、生まれては消えを繰り返していた「宇宙の種」が、トンネル効果によって膨張する側の現実世界に飛び出してしまい、それが急膨張を遂げてしまったのだというもの。

トンネル効果とは、電子などの素粒子に注目したミクロな世界において稀に確認される現象で、エネルギー的にある壁を乗り越えることができないとされる素粒子が、突如としてその障壁を乗り越えてしまい、まるでトンネルの中を通ったかのような現象を起こすことを言います。

ただ、これは実際にはトンネルを通るように壁をすり抜けたわけではなく、その壁に衝突した瞬間にその素粒子は消滅し、その壁の向こうから全く同じ性質を持った素粒子が飛び出してしまうために、結果壁をすり抜けてしまうように見えています。

このようにして、我々の知りえない空間から飛び出してきた宇宙の種が、急激に膨張を遂げ、今の宇宙を形作ったと考えられているのです。

ただ、これだけではなぜ「無」から宇宙が誕生するのかということを説明できていませんが、

そもそも物理学的には、どれだけエネルギー的に「無」の空間を作ったとしても、そこには空間的なゆらぎが存在しており、無と有の間で空間は揺れているものと考えられています。

そして、ゆらぎによって「有」となった空間の一部に、瞬間的に宇宙の種が生まれ、それが消えるという現象が繰り返し起こっていたと考えられているのです。

つまり、ある空間はどれだけエネルギーを抜ききって0の状態にしても、それはトータルのエネルギーが0になっているだけで、実は空間のゆらぎによって、その空間はわずかながらにエネルギーが偏り「有」になってしまう瞬間があり、

その有の瞬間にできた宇宙の種がトンネル効果によって飛び出し、突如として急激な膨張を遂げた、というのが今現在最も有力なビレンケンの仮説なのです。

ただ、この創生論はいまだに研究があまり進んでいない分野であり、これが事実かどうかを証明するにはまだまだ時間がかかりそうです。

宇宙の最初の急膨張「インフレーション」

先ほどの仮説が正しいかどうかは今後時間をかけながら解き明かされていくものと考えられますが、もしそれが正しいとするならば、宇宙はやはり無の状態から始まり、宇宙はその誕生直後はこの世界にあるどんな素粒子よりも小さい状態から始まったと考えられています。

しかし、そんな「点」にも満たない小さな小さな宇宙は、その後間もなくして急激な膨張を遂げることになります。それが、「インフレーション」です。

このインフレーションが始まったのは、宇宙の創生から10の-36乗秒~10-34乗秒後の出来事であると考えられており、その間に、宇宙は1cmほどの大きさにまで急膨張したものと考えられています。

急膨張して1cmになったといっても、それがどの程度すごいことなのかはいまいちわかりづらいですが、その宇宙は、インフレーションの直前までは10の-34乗cm程度であったと考えられています。

これはこの世に存在する素粒子よりもはるかに小さなサイズであり、例えばもし「電子」が同じ割合で急膨張すれば、あなたの部屋はたった1個の電子にすっぽり覆われてしまうことになるでしょう。

それが、たった10の-36乗秒~10-34乗秒に起こったというのだから驚きです。

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ビッグバンを経て、巨大な宇宙へと成長

そしてその後、宇宙はさらに巨大な膨張を遂げることになります。そのきっかけとなったのが、「ビッグバン」です。

このビッグバンは、インフレーション終了した後の宇宙創成から10の-27乗秒後から始まったと考えられており、

この瞬間、まだ感覚的には小さかった宇宙の内部は10の23乗℃という高温で満たされ、エネルギーが非現実的に高密な状態になりました。

これが「火の玉宇宙」と呼ばれているもので、その宇宙は、その非現実的なエネルギーで満たされた空間からエネルギーを解き放つように、空間を一瞬のうちに爆発的に膨張させました。

ビッグバンによる膨張が始まった瞬間には、その宇宙は1000Kmの大きさにもなったといわれています。

そして、その後1秒後には宇宙空間の温度が数兆℃にまで下がり、ここで初めて私たちの地球や体を形作る電子、陽子、中性子といった粒子が誕生します。

これらの複雑な事象が、宇宙の創生からわずか1秒にも満たない間に起きたのです。

インフレーションとビッグバンの違いとは?

インフレーションとビッグバンはどちらも今の巨大な宇宙の誕生にかかわるとされる大膨張ですが、実はこの2つには明確な違いがあります。

その違いとは、インフレーションと呼ばれる膨張は、簡単にいうと宇宙を平面的に引き延ばす膨張であったということです。

このインフレーションがあったからこそ、宇宙は一気に宇宙サイズにまで膨張することができ、

なおかつこのインフレーションが定義されたことで、宇宙論において問題となっていた観測宇宙の「平坦性問題」や、宇宙が極めて一様である「地平線問題」といったものを説明できるようになりました。

つまり、わかりやすく言うと

超大量の水が入った水槽に、肉眼では見えないほどの小さな穴が開くのが宇宙の創生であるとするならば、

その穴が、水が出てしまうくらいの大きさの円にまで膨張してしまったのが「インフレーション」で

さらに、その円から大量に水があふれだした瞬間が「ビッグバン」です。

ただ、この場合は水槽に水が入っている前提ですが、

無からの創生論によって誕生した宇宙が、なぜそれほど莫大なエネルギーを持っていたのかはおそらく誰にも分らないでしょう。

まとめ

今回の記事では、宇宙の誕生にかかわる「インフレーション」と「ビッグバン」について解説しました。

宇宙のインフレーション理論は1981年に初めて提唱された比較的新しい理論ですが、この理論が提唱されたおかげで、宇宙の誕生についてはさらに深く読み解くことが可能となりました。

しかし、もともとビッグバン説が広く知られていただけに、どっちが先なのかごっちゃになってしまいそうですが、

ビッグバンの直前にインフレーションによる相転移があったということを、是非覚えておいてください。

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