※テロメアは「老化」「寿命」と関係ない?

近年、生物の老化や寿命の1つの原因として非常に注目されている「テロメア

最近では、このテロメアに関する研究論文がしばしば話題になるため、その名前を聞いたことがある方も多いでしょう。

このテロメアは、人の細胞核内に保存されている「染色体」の末端を保護する役割のある一定の長さの塩基配列であり、細胞分裂の度に短くなっていくという特徴があります。

そして、最終的にこのテロメアがある一定の長さにまで短くなってしまうと、細胞はそれ以上分裂することができなくなり、

これが様々な細胞で起こることが、人の寿命の1つの原因になっているのではないかと考えられています。

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ただ、この記事をご覧になってくださっている方は、

結局テロメアは人の老化、寿命と関係あるの?関係ないの?という部分が知りたいのだと思いますので、

今回はそのあたりをできるだけ簡潔に解説していきたいと思います。

目次

テロメアは「老化」「寿命」と関係あるのか?関係ないのか?

結論から言いますと、テロメアは、人の老化や寿命と非常に密接な関係があるといえます。

なので、このテロメアについてさらに研究が進めば、人の老化は今より遅くなり、寿命はさらに伸びる可能性さえあります。実際に、今はそういったことを目標にテロメアに関する研究を行っている研究者ももちろんいるのです。

では、いったいテロメアを研究することがなぜ老化防止や寿命の延命につながるのかというと、

実は、今から約30年前の1985年、その分裂のたびに短くなっていくテロメアを修復する機能を持つ酵素「テロメラーゼ」が発見されたのです。

つまり、このテロメラーゼの機能さえコントロールできれば、人の細胞は無限に増殖する機能を獲得できるかもしれない。

少なくとも、今よりははるかに長い寿命を獲得できる可能性があるのです。

人の体細胞の分裂機能の限界

私たちの体は計約37兆個の細胞でできているといわれていますが、その多くを占める体細胞は、計約50回程度しか分裂することができないといわれており、この上限を「ヘイクリック限界」と言います。

さらに、その人の体細胞は最大寿命が120年とされており、先ほどのヘイフリック限界を当てはめて考えると、その120年という間に、約50回程度分裂を行うということになります。実は、人間の細胞の分裂回数って意外と少ないんですね。

ただこの50回という分裂は、そのすべてが同じ間隔で行われるわけではありません。若い時にはその分裂が割と頻繁に行われますが、年を重ねていくごとに、その間隔は段々と長くなります。

だからこそ、若いころには私たちの体の細胞は若々しい状態のものばかりですが、年を重ねると、次第に古い細胞の割合が増えてきてしまうのです。

また、実際はすべてが理想的に120年という寿命を全うできるわけではなく、細胞分裂の速さはその個体によって異なり、ストレスなどによって分裂が早まることなども指摘されているため、こういうこともあって、人の寿命には個体差が生じてくるのです。

さて、ではなぜ人の体細胞は、その50回という分裂をするとそれ以上分裂を行わなくなるのかというと、これがまさに、そのテロメア短縮によるものです。

テロメアの短縮が限界に近づくと、細胞はそれ以上の分裂が危険であると判断し、それ以上の分裂が行えなくなるようにする「細胞周期抑制タンパク質」を発現して、「細胞老化」という状態に入ってしまいます。

ただ、この理論で行くと、そのテロメアさえ修復できれば、細胞はもっともっと分裂することができるようになることになりますが、

それを可能にするのが、先ほど言った「テロメラーゼ」という酵素であり、実際に、実験のために取り出した体細胞にこのテロメラーゼを発現させると、そのこの酵素を作用させた体細胞は、ほぼ無限の分裂機能を獲得するということが実験の結果明らかにされています。

つまり、細胞は不死化させることができるのです。

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現状の課題

しかし、人の体細胞を不死化させるためには、そのテロメラーゼを導入するだけではまだ足りず、具体的には、細胞周期やDNA損傷を監視して細胞老化へと導く「p53遺伝子」や「Rb遺伝子」も抑制しなければなりません。

しかし、こういった遺伝子を抑制することはつまり、細胞ががん化してしまった際には、それを抑制するものがいなくなってしまうため、もしテロメラーゼを経て不死化した細胞ががん化してしまった際には、無限に増殖するがん細胞ができてしまうことになります。

また、実際に現代でもまだ不治の病とさえ考えられているような「がん」という病気は、まさにこのテロメラーゼの発現によって、がん細胞が不死化してしまうことが1つの原因であると考えられており、

そういったテロメラーゼを発現したがん細胞が、最終的に「腫瘍」のような細胞の塊へと変貌してしまうのです。

まとめ

今回の記事では、最近注目されている「テロメア」は人の老化や寿命と関係あるのか、関係ないのかを詳しくまとめました。

がん細胞がテロメラーゼを発現してしまうことからもわかりますように、実は人の体細胞は、すでにそのテロメラーゼを発現するための遺伝子というものを持っています。

しかし、そのテロメラーゼの発現によって、細胞が暴走を起こしてしまわないように、今はその発現が抑えられている状態。

そのため、そのテロメラーゼの発現を正しい方向でコントロールすることができるようになれば、人は今よりもっと長い寿命を健康的に生きていける可能性があるのです。

ただ、人類がそこまでの知見を得るためにはまだまだ時間がかかると思いますが、

もしかするとあと1000年後には、人類は不老不死の存在に大きく近づいているのかもしれません。

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