ついつい忘れてしまいますが、私たち人間も
「ヒト属」という分類に分けられる猿の仲間です。
我々ヒト属は、今から約600万年前に「チンパンジー属」との共通祖先分岐し、知能を発達させる独自の進化を遂げることに成功しました。
また、それより前の今から約800万年前にはゴリラ属との共通祖先から分岐し、約1,700万年前にはオランウータン属との共通祖先から分岐しました。このように、すべての猿は最終的に同じ祖先に行きつき、その中で最も知能を発達させたのが、我々「ヒト属」だったのです。
そして、現存している猿の中で、最も人間に近いといえるのが、チンパンジー属の猿達ですが、
そのチンパンジー属は
- チンパンジー
- ピグミーチンパンジー
という2種から成り立っており、
このピグミーチンパンジーは、現在は「ボノボ」と呼ばれています。
このピグミーチンパンジーと、一般的なチンパンジーは、
今から約90万年ほど前に分岐したと考えられていて、
ピグミーチンパンジーは、
チンパンジーよりも平和を愛する動物として進化してきました。
そして、このピグミーチンパンジーの大きな特徴の1つが、他の類人猿には見られない、
変わった性行動にあります。
ピグミーチンパンジーは、性行動を繁殖のためだけではなく、平和的な解決のためにも用いるのです。
ピグミーチンパンジー(ボノボ)の特徴、変わった性行動とは?
ピグミーチンパンジーは、その特徴として一般的なチンパンジーよりもやや小柄で、
一般的なチンパンジーが時にかなりの狂暴性を見せるのに対し、ピグミーチンパンジーは同属同士の争いがほとんどなく、非常に温厚な猿として知られています。
このピグミーチンパンジーも、以前はチンパンジーの中の亜種として扱われていました。
実は、ピグミーチンパンジーはただ1種のみですが、
チンパンジーは、亜種も含めると計5種類いるのです。
しかし、その後ピグミーチンパンジーは、同じチンパンジー属の猿ではあるものの、種類としてはチンパンジーとはまったく別であるということがわかり、
さらに、現在では「ボノボ」と呼ぶ方が一般的です。
このボノボは極めて知能が高く、平和を好み、ほとんど争いを起こさないことが分かっています。
そして、不思議なことに、このボノボは疑似的な性行動によって、コミュニケーションをとるという珍しい習性を持っているのです。
例えば、メス同士のボノボは、美味しい餌を見つけた時や、他の群れが近づいてきたときには興奮してしまうのですが、互いの性皮をこすり合わせる疑似的な性行動を行うことによって、その興奮を抑えます。この行動は「ホカホカ」と呼ばれています。
また、2匹のメスのボノボがいて、片方が餌を持っていた時、エサが欲しいボノボは相手をホカホカに誘い、そのあとに餌を分けてもらいます。このように、疑似的な性行動は、絆を深めるためのコミュニケーションとして利用されるのです。
以下の動画では、1分40秒あたりからそのホカホカを見ることができます。足で相手を小突いているのは、喧嘩をしているのではなく、ホカホカに誘っているのです。
また、オス同士でも互いのペニスをこすりつけあう、「ペニスフェンシング」という行動がみられることがあります。
メスのホカホカは、例えば新しいメスが群れに仲間として加わるときにも見られます。
人はハグや握手によってコミュニケーションをとりますが、ボノボにとってはその性行動こそが絆を深めるための方法なのです。
ボノボはオスもメスもほぼ対等
チンパンジーや、ゴリラ、オランウータンなど、我々人間と比較的似た遺伝情報を持つ猿の仲間は類人猿と呼ばれますが、それらの類人猿のほとんどは、その特徴としてオスの方が絶対的な優位に立っています。
そして、性行動に関しても、
時には嫌がるメスに対してオスが無理やり行うことがあります。
しかし、ボノボではそういった強姦が起こることはないといいます。
オスはメスを交尾には誘いますが、相手が乗り気では無ければそれ以上は何もしません。オスもメスも対等な関係を築いているのです。
そして、いざ争いが起こりそうなときにも、ホカホカなどによって同属での争いを避けます。本当に平和的な動物なのです。
他の群れと出会ってしまったら…
ボノボはオスとメスが集団となって暮らしていますが、餌を探している途中で、他の群れとばったりと出会ってしまうことがあります。
この場合、一般なチンパンジーだったらその争いがまさに殺し合いにまで発展してしまうことがあります。チンパンジーは大変気性が荒く、相手の群れを襲って殺してしまい、その相手の群れの逃げ遅れた子供を食べてしまうこともあります。
さらに、チンパンジーは時に群れの中からも反乱がおこり、仲間や子供を殺してしまうことがあるのです。これを、人間の感覚で残酷だと判断することはできませんし、人間も無益な殺生を行うことがありますが、
そのように同属間での争いが起こることから、チンパンジーが温厚ではないことがわかります。
そして、ボノボがもし知らない群れと出会ったらどうなるでしょうか?
まさに一触即発の場面ですが、
実はこの場合でも暴力的な争いは起こりません。
それどころか、その2つの群れの間でさえ多様な性行動をとり、群れ同士で混ざり合って、仲良くなってしまうというのです。そして、自分の群れのメスが相手の群れのオスと性行動をとっていても、オスは特に怒ることもなく、ただ傍観しているだけだといいます。
このように、同じ群れの中だけではなく、種としてその性行動を仲良くなるために利用しているのです。
無益な殺生をしないボノボは、人間よりも平和的な猿だといえますね(^^)
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