現在、平昌オリンピックが開催され、様々な競技結果に世界が熱中していますが、
その冬のオリンピックにおいて、日本人が特に注目したい競技の1つが、
「フィギュアスケート」であることは間違いないでしょう。
そして、羽生結弦選手もいよいよ現地入りし、宇野昌磨選手とのダブル表彰台への期待が高まりますが、
このタイミングだからこそ、8年前の2010年にカナダで行われた、
バンクーバーオリンピックについて今再び振り返りたいと思います。
このバンクーバーオリンピックは、あのフィギュアスケート界のレジェンドとも言っていい、浅田真央選手が銀メダルを獲得した大会です。
オリンピックで銀メダルなんて、普通に考えたらとてつもない偉業であるわけですが、
その当時、その結果を誰よりも悔やんでいたのが、その銀メダルを獲得した浅田真央選手でした。
そして、その時優勝したのが、現在オリンピックが開催されている韓国代表の、キムヨナ選手です。
浅田真央選手とキムヨナ選手は、どちらも1990年の9月生まれ。
意識するなという方が難しいまさに同世代の良きライバルでしたが、
バンクーバーオリンピックではキムヨナ選手に軍配が上がり、見事に金メダルを獲得しました。
ただ、このバンクーバーでの戦いにおいてはそのキムヨナ選手の高すぎる点数に対して、疑問の声が挙がったのを覚えている方も少なくないと思います。
では、その当時、その浅田真央選手とキムヨナ選手の違いとはいったい何だったのか、今回の記事で詳しくまとめていきたいと思います。
「天才」VS「天才」浅田真央選手とキムヨナ選手のバンクーバーでの戦いを振り返る

今となってはフィギュアスケートは日本人の多くが注目する人気競技となりましたが、正直言って一昔前まではそれほど注目されるような競技ではありませんでしたよね。
もちろん、昔から日本にもフィギュアスケートの選手はいましたし、一定の人気はありました。今となっては女子でも飛ぶ選手が増えた「トリプル・アクセル」も、世界で初めて成功させたのは、日本の伊藤みどり選手です。
ただ、特に男子に関しては、その大会なども深夜に放送されることが多く、今のように夜7時、8時といったゴールデンタイムに見られるようなことはありませんでした。これは本当につい最近のことで、高橋大輔選手や、羽生結弦選手などが活躍されてから、男女ともに注目の演技になったというような印象があります。
そして、そういったフィギュアスケートを一躍日本の人気競技へと押し上げた立役者の1人が、
浅田真央選手であることに異論を唱える人はいないでしょう。
浅田真央選手はその愛嬌のあるルックスと、その演技の美しさ、そして高難易度の技にも臆せず挑戦する姿などから、国内のみならず、国外からも愛される存在へと成長していきました。
あの男子ロシア代表でトリノオリンピック金メダリストのプルシェンコ選手も、女子ロシア代表として活躍していたリプニツカヤ選手も、その浅田真央選手のことが好きだったことはよく知られている話だと思います。
そんな浅田真央選手は、その「トリプルアクセル」という技を武器にバンクーバーでのオリンピックに臨みましたが、結果はキムヨナ選手に大差で敗れる結果となってしまいました。
具体的な内訳としては、
- キムヨナ選手が 228.56点(SP 78.50点 FS 150.06点)
- 浅田真央選手が 205.20点(SP 73.78点 FS 131.72点)
となり、20点以上もの差をつけられてしまったのです。
このような結果から、浅田真央選手はフリースケーティングの後に思わず涙を見せました。浅田真央選手は、オリンピックを除けばキムヨナ選手にも何度も勝ったことがあります。
ソチオリンピックまで含めると、通算戦績はキムヨナ選手が9勝、浅田真央選手が6勝と、キムヨナ選手に軍配があがるものの、浅田選手とキムヨナ選手は本当に良いライバルであったことがわかります。
だからこそ、バンクーバーでの結果は浅田選手にとって本当に悔しいものだったのでしょう。フィギュアスケーターは現役選手としての寿命が他のスポーツに比べて短いので、浅田真央選手も、オリンピックという舞台でキムヨナ選手に勝てるとしたら、このバンクーバーが最初で最後かもしれないと思っていたはずです。
それに、浅田真央選手もキムヨナ選手も、まさにこのバンクーバーオリンピックに出場したときが全盛期といえるような時期でした。その天才2人の戦いに、思わず息をのんだ方も多かったでしょう。
というわけで、そのバンクーバーでの勝負はキムヨナ選手に軍配が上がったわけですが、その当時話題となったのが、その採点、つまり点数の違いに対する八百長疑惑です。すなわち、キムヨナ選手には何らかの意図的な力によって高得点が与えられているのではないかということで、日本の大勢の真央ちゃんファンが不満を露わにしました。
バンクーバーオリンピックでの八百長疑惑について
バンクーバーオリンピックでは悔しい結果に終わってしまった浅田真央選手ですが、その当時は、その浅田真央選手とキムヨナ選手の点数の違いについて、不満の声を上げる方が大勢いました。
また、そういった声を挙げていたのは、何も素人だけではありません。フィギュアスケートに精通した専門家の方からも、ちょっとおかしいんじゃないの?という趣旨の声が多数挙がりました。
ちなみに、バンクーバーオリンピックでは、そのキムヨナ選手が勝利したという事実だけについては異論を唱える人はおそらくいないでしょう。
実際、浅田真央選手はフリースケーティングで大きな差をつけられてしまいましたが、そのフリーでは、キムヨナ選手はほぼ完ぺきで、浅田真央選手は少しミスをしてしまったので、ここで差がついてしまうのは仕方のない話でした。
問題となったのは、そのフリーの前に行われるショートプログラム(SP)の結果についてです。浅田真央選手は、このSPでキムヨナ選手にはできない高難度高得点のジャンプ「トリプルアクセル」を飛び、ほぼ完ぺきな演技をしたにも関わらず、結果キムヨナ選手の方が5点近く高い結果となりました。
こういった部分が、次のフリースケーティングに与える影響というものも大きいでしょう。
ちなみに、フィギュアスケートは
- ジャンプの種類や出来に応じて決定される「技術点」
- スケート技術や振り付け、曲の解釈などによって決定される「構成点」
でその点数が決まってくるのですが、
バンクーバーオリンピックのSPの得点内訳は
- 浅田真央選手の得点は「技術点:41.50」+「構成点:32.28」=73.78
- キムヨナ選手の得点は「技術点:44.70」+「構成点:33.80」=78.50
であり、浅田真央選手はトリプルアクセルを成功させたにも関わらず、そのジャンプの難易度が反映される技術点で3点以上も差をつけられる結果となったのです。では、こういった背景には2人にどのような違いがあったのでしょうか…
まず、こういった結果について、プルシェンコ選手は、「真央はトリプルアクセルという難しい技に挑戦し、それを見事挑戦させたのだから、もっと評価されなければおかしい」という趣旨の発言をしていました。
どんなスポーツも、より難しい技を決めたほうがより高く評価されるというのは当たり前のことですが、フィギュアスケートでは必ずしもそうではなく、シンプルに難しい技が、必ずしも絶対的な高得点につながるわけではないという背景があります。
しかし、それでもなお難しい技に挑戦する姿勢を崩さない浅田真央選手は、だからこそ沢山の選手から愛される存在だったのです。
正直、こういった得点に対して何らかの力が働いた可能性はあるかもしれませんし、ないかもしれません。もちろん、ないとは思いたいですし、専門家でも、これは妥当な得点だったと評価する人もいます。
しかし、実はキムヨナ選手は、このバンクーバーオリンピックを見据えてかどうかはわかりませんが、実はこの大会に臨むにあたって、その地元カナダの選手であるブライアン・オーサー氏(カルガリーオリンピック銀メダリスト)をコーチにつけ、その練習もカナダを本拠地にしているという背景がありました。
すなわち、大会に臨む時点で、キムヨナ選手と浅田真央選手は、キムヨナ選手の方がカナダにとってはより親しみのある選手だったのです。なので、これは全く憶測の話ではありますが、バンクーバーでのあのSPの結果は韓国側の作戦勝ちだった、との声もあります。
しかし、あの金メダリストがこれに反論
というわけで、この大会の結果は日本中、そして世界的に見ても物議をかもしたわけですが、
実は、あのトリノオリンピック金メダリストの荒川静香さんは、キムヨナ選手のスケーティング技術を賞賛。ジャンプについても、その技術力を高く評価しています。
確かに、浅田真央選手とキムヨナ選手では、より難しい技に挑戦しているのは浅田真央選手の方です。そして実際に「トリプルアクセル」と「ダブルアクセル」では、ダブルアクセルの基礎点は3.3点であるのに対し、トリプルアクセルの基礎点は8.5点と、その差には5点以上もの差があります。
しかし、ジャンプはただ回転数が足りていればOKというわけではありません。着氷の上手さや高さ、そういった部分でさらに点数が加算され、そういった「ジャンプ技術」というものが、やはりキムヨナ選手は圧巻なんだそうです。つまり、こういう部分で浅田真央選手とキムヨナ選手には違いがあるといえます。
もちろん、そういった部分は浅田真央選手もすごいのは間違いないですが、やはりキムヨナ選手はそれを上回る技術の持ち主なのでしょう。
なので、「技術力の浅田真央」VS「表現力のキムヨナ」というような対比がよくされていましたが、プロの目から見ると、キムヨナもまたその技術力が武器だと荒川静香さんは述べています。
しかし…例えばプルシェンコ選手などが言いたかったのは、
「いやいや、真央はより難しい技に挑戦したのに、どうして2回転ジャンプを無難にまとめたキムヨナ選手の方が点数が高いんだ?着氷うんぬんより、難しい技を成功させた真央の点数が低いのはおかしい!」
ということなんです。
つまり、
- シンプルにジャンプの種類として難しい技術が必要なトリプルアクセルを飛んだ浅田真央選手
- トリプルアクセルには基礎点で及ばないものの、2回転ジャンプなどを総合的な技術力で完璧に飛んだキムヨナ選手
どちらも「技術力」が必要であることには違いありませんが、その焦点がどこなのか、という部分が少し違うような感じなんですね。
ただ、キムヨナ選手は間違いなく世界1といっていい技術を当時持っていましたし。どうしても日本人にとっては嫌なキャラクターに映ったかもしれませんが、それだけの努力をしていたのは間違いありませんし。なので、フィギュアを応援したい私たちからすると、純粋に実力でもぎ取った点数であると信じたいですね。
まとめ
今回の記事では、バンクーバーオリンピックを振り返り、浅田真央選手とキムヨナ選手の違いとはいったい何だったのか、ということについてまとめました。
フィギュアスケートという競技は、スポーツの中でも特に特殊な部類の競技だと思います。というのも、その採点基準が非常に多いからです。
1つのジャンプを成功させる、それだけでも様々な採点要素が絡んできます。そこまでのスケーティングの緩急、表現力、踏切り、着氷、スピード、高さ、回転数。この辺りは本当のプロにしかわからない事情があるのでしょう。そして、やはり1人のスケーターとして、バンクーバーでのキムヨナ選手は圧倒的な力を持っていたのです。
結果、浅田真央選手は銀メダルでしたが、その浅田選手は間違いなく日本人にとってはヒーローでした。もう現役は引退してしまいましたが。これからはまたどんどん色々なことに挑戦し、また違った分野で輝いてほしいですね(*^-^*)
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