
2018年4月11日、ついにその閲覧ができなくなった漫画海賊版サイト「漫画村」
今の日本の法律ではなかなか法的な措置をとることは難しいものの、その被害額の大きさや、今年2月には日本漫画家協会がサイトを利用しないよう呼び掛ける声明を発表したことなどを受け、事態を重く見た政府も、その対応に本腰を入れて取り組む動きを見せていました。
ちなみに、なんとその漫画村によるこれまでの被害額は、流通額ベースでおよそ3000億円と見積もられています。
また、数兆円にもなるなんて見解も出ており、
とにもかくにも、漫画の作者、およびその関係者がかなり困っていることは確かです。
そして政府が動いた結果、その漫画村は事実上の閉鎖に追い込めたものの…
実はこの漫画村の閉鎖については、その政府の対応について反対意見も多数出ていました。
では、これはいったいなぜなのか。その理由を詳しく解説していきたいと思います。
目次
そもそも、なぜ漫画村の運営者は逮捕されないのか?

漫画村は現在、閲覧ができない状態になっているものの、実はこれはサイトが本当の意味で閉鎖されたわけではありません。実際はその閲覧が制限されているだけで、またその運営者も逮捕されていないのです。
本来、これを違法行為として裁けるのであれば、その運営者を逮捕して、そのデータもすべて消去してしまえば終わりです。
おそらく、現段階でこの漫画村を誰が運営しているのかというのはかなり絞られており、特定できる段階にまで来ていると考えられます。
実際、過去には同様の漫画海賊版サイトを運営し、逮捕された人もいるということをご存知の方も多いと思います。それと同様にこの漫画村の運営者も取り締まってしまえば良いわけですが、
しかし、この漫画村の運営者はなぜ逮捕されないのかというと、実はこの漫画村の運営者は、かなり用意周到な方法でサイトを運営しており、なかなか日本の法律では裁けないという現実があるのです。
結論をいうと、
漫画村はネット上に落ちている画像をロボットで自動収集して表示しているだけのサービスであり、違法ではない!
と運営者側は主張しています。
は?と思う方もいると思いますし、いやいやダメだろと感じると思うのですが、
もしこれが本当なら、これはやはり日本では確実に違法とは言えないのです。
というのも、例えば皆さん今、Googleの検索エンジンで、好きな漫画のタイトルを検索して、どんな画像が表示されるか確認してみてください。
おそらく、自分の好きな漫画の画像が沢山出てくるんじゃないでしょうか?誰かがサイトでその漫画の紹介をしている画像とか、掲示板に張られた画像とか…
しかし、これはその画像をネット上にアップロードした人が著作権侵害に問われるのであって、その画像を収集して表示しているGoogleが違法なことをしている、という話にまでは発展しないのです。
つまり、漫画村もただそういうネット上の画像を表示しているのであって、
違法とまでは言えないだろ?
というのが運営者側の主張なのです。なので、その漫画村の画像の権利等に関する問い合わせは、画像を実際にネット上にアップロードしているサイトの方にしてくれ、ということも漫画村のサイト情報の部分に記載がありました。
実際、今回は漫画村だけが特に注目されていますが、海外にはそういった日本の漫画の画像を違法にアップロードしているサイトもあるようです。また、規模は違えど国内にも同様のサイトはいまだに多数ありますから、この主張はある意味では正当性があります。やっていることは確実に悪質ですが(;^ω^)…
漫画村を閉鎖に追い込むためにとられた措置とは?
とはいえ、今回その漫画村は事実上の閉鎖に追い込まれたわけですが、
これはいったいどうしてなのかというと、
事態を重く見た日本政府は、今月4月13日に
「サイトブロッキングをインターネット接続業者が自主的に実施することを促す」
ということを閣議決定したのです。
つまり、
法的に取り締まるのは現状難しいけど、この漫画村の被害はちょっとやばいから、インターネット接続業者は、このサイトへのアクセスをブロッキングするように措置をとってくださいね。
というように促したということです。
また、実際は4月13日にそう決まったとされていますが、インターネット接続業者にはもう少し前からその政府からの圧力がかかっていたようです。
ただ、この措置については、賛否両論が巻き起こり、反対意見も多数出ています。
ではそれはいったいなぜなのでしょうか?
漫画村の閉鎖措置に反対意見多数!なぜなのか理由を解説!
今回、政府からの要望によってインターネット接続業者はその要望に応える形で漫画村への接続を制限することとなったわけですが、
これには、その要望された側のインターネット接続業者側からも、かなり反発の声が挙がっているようです。
実際、4月12日には、「一般社団法人 日本インターネットプロバイダー協会」より次のような発表がされています。
インターネット上の海賊版サイトによる著作権侵害への対策として、政府が ISP(インターネット接続サービスを提供する電気通信事業者)に「ブロッキング」による接続遮断措置を要請する方向で検討していることが報道されており、インターネット接続サービスを利用される国民の皆様からは、通信の秘密、ひいてはプライバシーに関するさまざまな疑問や懸念が寄せられています。
皆様のご懸念のとおり、ブロッキングは ISP 事業者が権利侵害行為と一切関係のない人を含めて、インターネット接続サービスのすべての利用者を対象に、web サイトのアクセス先などを監視して、一部の通信を遮断する方法です。これは電気通信事業法が罰則を伴って禁止する、通信の秘密の侵害にあたる行為です。
唯一の例外として児童ポルノ流通防止対策のために行われているブロッキングは、児童ポルノが児童への深刻な性的虐待の結果であり、一度画像が拡散してしまえば後から被害を元に戻す方法もないことに特殊性があります。このため、被害者の支援に取り組む団体、法学者、ISP 事業者など様々な立場の構成員が長年にわたり慎重な議論を重ね、緊急避難にあたるものとして厳格な要件と適正な手続きのもと、他の違法・権利侵害情報に広げないという条件で利用者の皆様のご理解を得ながら、ISP 事業者の自主的な取り組みとして実施しているものです。当時の政府の立場も、通信の秘密への国民の懸念に対して、児童ポルノ以外に要請を広げることはないというものでした。
今回の「要請」に法的根拠はなく、また、ブロッキング以外に取りうる手段などの議論を十分尽くしたともいえない中で、事実上権利者団体と政府だけでの結論を押し付けることは、通信の秘密の最大の当事者である国民の理解を得られるとは考えられません。
これをわかりやすく言うと、
現在このブロッキング措置は、長きにわたり厳正な手順を踏んで実地され、性的虐待などにもつながる恐れのある児童ポルノ案件においてのみ例外的に行われているものであり、それ以外ではこのような措置を要請されることはないといわれていたものの、
今回、政府は「漫画村」に対する措置として、十分な話し合いが行われたとは言えない中で、ブロッキング措置を促すということは、電気通信事業法にも抵触する恐れのある行為である。と述べています。
つまり、漫画村問題の対応を一般の通信事業者に丸投げしてしまい、それに対して接続業者からは反対の声が出ているというわけなんです。
実際、今回の政府の決定は、国会審議を得たものではなく、与党内の同意によって、政府の独断で閣議決定されたものです。なので、十分な議論の上での措置とは言えません。
「やっても無駄」という意見も…
今回、その政府の対応には確かに良くない部分もあったといえますが、結果的にはそのブロッキング措置によって「漫画村」は実質閉鎖に追い込むことができました。
「実質」というのは、実際は漫画村というサイト自体はまだどこかのサーバー上に残ったままだからです。
簡単に説明すると、
「サーバー」とはつまり「インターネット上の土地」のようなもので、
「漫画村」はその土地の中にある家のようなもの。そして、その家の中に今漫画がずらーっと並んでいるような感じなわけですが
今回のブロッキング措置は「その漫画村が見れなくなっているだけ」で、漫画村というサイト自体はそっくり残っているのです。
なので、そういう意味では実質上の閉鎖といえるわけですが、犯人が捕まっていない以上、根本的な解決にはなっていません。
そして、このブロッキングについては「やるだけ無駄」という意見が多数出ており、政府の対応についてやはり反対意見が多数出ています。
「やるだけ無駄」というのは文字通りで、漫画村閉鎖に追い込んでも、また「第二の漫画村」が現れることを危惧している人が多数いました。
そして、それはなんと一瞬で起こりましたがwww(笑)
漫画村の閉鎖直後、Twitterにて
「漫画村が漫画タウンとして復活したよ。」
というアカウントが現れ、漫画村とほぼ同じようなサイトのリンクが張られていました。これには、政府も苦笑いするしかなかったでしょうね。
それに、インターネット接続業者や、やるだけ無駄と言っていた方にとっては、ほらやっぱりな、という感じでしょう。とは言えそれにしてもなんて対応の速さだと思いますが(笑)
しかも、そのTwitterのアカウントはかなり強気の姿勢で独自の見解を述べています。
いくらサイトを潰したって、もう漫画の売り上げは増えないよ。みんな無料で音楽聴くし、無料でエロ動画を見るし、もう出来上がったコンテンツにお金を払う時代じゃないんだよ。漫画だけを叩くのはおかしいんだよ。
— 漫画タウン【公式】 (@mangataun) 2018年4月12日
サイトのせいで漫画の売り上げ落ちたの?ほんとに落ちたの?それはサイトのせいじゃなくて出版社の努力不足だよ。これからも今のままの売り方をするなら漫画は売れないよ。
— 漫画タウン【公式】 (@mangataun) 2018年4月12日
これだけオープンにしてるのにまだサイトは健在だよ。なにしてるの?人気すぎて重くなるのはごめんね。
— 漫画タウン【公式】 (@mangataun) 2018年4月13日
いや~かなり挑発的なツイートですね。
ただ、実はこの漫画タウンなる新しいサイトは、昨年の2017年の6月には開設されていたサイトみたいです。漫画村が閉鎖になることを踏まえた上でバックアップのような感じで用意していたサイトと言えるでしょうか。
まさに、「やるだけ無駄」という感じですね。これを根本から解決すのであれば、まずはそれを取り締まる法律を1から作らなければ解決は難しいようです。
まとめ
今回の記事では、漫画村の概要や、その閉鎖措置に反対意見が出ているのはなぜなのか、理由を解説しました。
この漫画村、実はサーバー自体も海外に設置されているため、それもまた取り締まることが難しいというのが現状としてあります。運営者が日本にいるかどうかというのはわかりませんが、サーバーが海外にあるということは、日本の法律では裁けない可能性が十分にあるんですね。
インターネットの普及は我々の生活を便利にしてくれますが、それによってアナログの世界は衰退していくという現実を突きつけられているというような感じです。
また、皮肉にも漫画村のようなサイトは利用者にとってはほぼメリットしかないという側面もあるので、これを世論として批判する人の方が少ないということも、その対応が遅れていることに深く関係しています。
今後、漫画業界、そして政府がどのような対応を見せるのかというところに注目していきたいと思います。
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