※粘菌を利用した研究「粘菌コンピュータ」とは?

粘菌とは、枯れ木や枯れ葉などにこびりついているコケのような物体でありながら、実はゆっくりと時間をかけながら移動し、バクテリアなどを食べながら生きている動物的な性質を持つ不思議な生物です。

私たち人間は沢山の細胞がくっついてできている多細胞生物であり、さらにその細胞1つ1つの中に「」という部屋を持っていますが、実は粘菌は大きな細胞が1つだけでできています。しかし、その大きな細胞の中に沢山の核が存在しており、このような形態を多核体と言います。

つまり、大きな細胞の中に無数の核が存在し、その間にはゲル状の細胞質が存在しています。だからこそ、アメーバのような流動的な動きをすることができるのです。

と、言葉で説明してもイメージがつきにくい方もいると思いますので、まずはその粘菌がどのような動きをするのかを、以下の動画でご確認ください。

ちなみに、この動画の中では最後にキノコのようなものができていますが、

この粘菌は最終的に「子実体(しじつたい)」と呼ばれるまさにキノコのようなものを作り、

そこから「胞子」を飛ばして子孫を残すのです。

さて、粘菌の大まかな説明を最初にさせていただきましたが、

今回の記事では、その粘菌を使った研究

粘菌コンピュータ

とはどのようなものなのかということについて解説していきたいと思います。

粘菌はアメーバのような謎めいた生物であるにも関わらず、実はとても頭が良いのです。

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粘菌を利用した研究「粘菌コンピュータ」とは?

日本では、北海道大学や、東京工業大学などでこの粘菌に関する研究が行われていますが、この粘菌は、2000年代になってからある驚くべき特徴があることが分かってきました。

それが、

粘菌には学習能力があり、記憶能力があるということ。

粘菌は非常に原始的な存在なので、およそ哺乳類が持っているような脳や神経のような構造を持っていないものの、なぜか計算処理能力を持ち、学習することができるのです。

これが非常にわかりやすく説明できるのが、粘菌と迷路を用いた研究です。

まず、小さな迷路を作り、その中に粘菌を放つと、粘菌はその迷路全体に広がります。

しかし、例えばその迷路の入り口と出口となる場所に粘菌のエサとなるものを置いておくと、

粘菌は、その2か所をつなぐ部分だけを残してその体を収縮させ、まさに迷路の解となるような構造に変化するのです。

これは一体どういうことなのか、というのは以下の動画でご確認ください。

ちなみに、記事の冒頭で粘菌は1つの細胞でできているといいましたが、動画の中では最初無数の粘菌が迷路内にちりばめられ、それがくっついて1つになる様子が観察できると思います。

このように、実は粘菌は同種のものが融合し、1つになることも知られています。この場合も細胞は1つで、お互いの核を共有することになります。

そして、今回お話ししている粘菌コンピュータとは、その粘菌の処理能力を、コンピュータのように利用するもののことを言います。このような研究分野はバイオコンピュータと呼ばれるものに含まれ、粘菌はまさにその代表例です。

では、この粘菌コンピュータとはどのような場面で利用できるのでしょうか?例を挙げて解説します。

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粘菌コンピュータの利用例

粘菌コンピュータは、まさに粘菌を用いて、その粘菌に現代のコンピュータでも難解な事象を解いてもらおうとする試みから生まれたものです。

例えば、送電網や鉄道網、物流などにおけるネットワークの形成は、何より効率的であるべきです。そして、現在存在するネットワークにおいても、どのような経路を通って全体を移動していくのが最も効率が良いのかということは、非常に大切な問題であるということがわかりますよね。

これを、もし最も効率が良いものと悪いもので比べたら、それをずっと繰り返していくと生じるコストの差は莫大なものになります。

しかし、現存するネットワークやシステムは、実はその多くが明確な法則もなしに非効率に作られてしまっているのです。

なので、その効率化のためにもその計算をすることが大切ですが、例えばその道筋が沢山あり、そもそもの要素が多すぎると、計算処理に莫大な時間がかかり、実は現代でもそれを電子コンピュータで計算しようとするのは中々難しいことなのです。

つまり、コンピュータは確実なものを計算することは得意ですが、不確定要素を含めた計算を行うことは非常に苦手なのです。また、そもそもそういう計算システム作ることは簡単なことではありません。

しかし、粘菌コンピュータで用いられる粘菌は、スタートとゴールにエサをおけば、先ほどの迷路の例のように実に良い効率でその形を収束させます。つまり、コンピュータ的な解釈をすると、

「エサ」を「入力」とし、「出力」として実際にその「形」を私たちに見せてくれるのです。

また、この粘菌は光を嫌がるという性質を持っているため、その光もまた入力として利用することができます。

こういったものを利用して、例えば単純な最短距離ではなく、もう1つエサを置けば、ある場所を経由しての最短距離を導き出すことも可能です。

そして、この粘菌コンピュータによってその解を導くことが期待できるのが、

例えば、

巡回セールスマン問題

と呼ばれているもの。

これは、例えばA,B,C,D,E,F,という都市がそれぞれに距離を取りながら散らばっていた時に、例えばAをスタート地点とし、B~Fを必ず1回経由して再びAに戻るとすると、どのような順番で移動するのが最も効率が良いのか、という問題です。

迷路とは違い、無造作に散らばっているというのが1つのポイントですね。これを、粘菌コンピュータを使えば非常に効率よく解ける可能性があるのです。

確かに、これは非常に重要なことですよね。そして、粘菌コンピュータがいかに画期的なアイデアであるかということがわかります。この粘菌コンピュータを発表した日本の研究グループは、2008年度のイグノーベル賞を受賞しています。

いまだに謎が多い粘菌の生態

粘菌が学習能力を持っていることは説明しましたが、実はこの粘菌は、苦いものを嫌い甘いものを好み、さらに臭いにも敏感に反応するという性質も持っています。

しかし、例えばこの粘菌はカフェインを嫌うという特徴があるものの、不思議なことにしばらくするとそのカフェインにも慣れてきます。これもまた、学習の一種であるといえますね。

そして、驚くべきなのは、そのカフェインに慣れた個体が別の個体と融合すると、その個体もまたカフェインに慣れた性質を示すということ。

つまり、お互いにその記憶を共有しているのです。

しかし、その中身をのぞいてみると、やはり複雑な情報をやり取りできるような明確な構造は見られません。

だからこそ、脳や神経も持たない粘菌が、どこに記憶を保存し、それを体全体で共有しているのかというのは非常に興味深い謎なのです。

この粘菌は、これからまだまだ我々を驚かせてくれそうですね。

それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)

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