どんな人でも、今までに一度はケガをしたことがあるでしょう。
私は学生の頃野球をやっていましたので、ケガはつきものでした。
膝やひじを擦りむいたことは、もはや数えられないくらい沢山あります。
しかし、そういった擦り傷は、かさぶたになり、治りかけになってくると、
猛烈なかゆみが生じてくるので厄介ですよね。
そして、ついついかゆみに耐え切れずかいてしまったり、無意識のうちにかいてしまって、またかさぶたがはがれてしまい、怪我をぶり返してしまったという経験をしたことがある方も多いでしょう。
では、そもそもなぜかさぶたはかゆいと感じるようになるのでしょうか?
今回の記事では、その理由を詳しく解説します。
なぜかさぶたはかゆいのか?そのかゆみの理由を解説!
かさぶたは切り傷、擦り傷といった出血を伴う傷が生じた部位に徐々に形成されていくものですが、これはその血液中に含まれる赤血球、血小板、フィブリンなどのタンパク質が凝固することによって形成されていきます。
このかさぶたの目的は、傷をさらなる衝撃や雑菌のような外敵要因から保護し、
さらに、そのかさぶたの下にある修復部位の
「湿潤環境」を保つことです。
つまり、傷の直りを早めるためには乾燥させないことが何よりも重要だということを体はわかっているので、かさぶたはその下で新しい皮膚が形成されていくまで傷口の乾燥を保護する役割をしているんですね。
そして、今回お話しするかゆみという現象は、この傷が治っていく過程で仕方なく生じてしまいます。
まず、結論から言うと、かゆみの原因となるのは「ヒスタミン」と呼ばれる化学物質です。
これは、アレルギー反応と密接に関係する成分であることがわかっており、
例えば、蚊に刺されが起きた際には、蚊がその針を刺すときにばれないように体内に注入する麻酔成分に対して体がアレルギー反応を起こし、
それがヒスタミンの分泌を促すことによって、かゆみを感知する神経が反応し、脳へとその信号が伝えられます。
そして、このかゆみを感じる神経は非常に皮膚の表面に近い場所にあることがわかっているのですが、傷の治りかけの際には、かさぶたの下にはまだ完全には出来上がっていない非常に敏感な皮膚が存在していることになります。
すると、こういった皮膚が衝撃を受けた際に、ヒスタミンが分泌され、それがかゆみの信号となって脳へと伝えられるために、傷の治りかけの際にはどうしてもかゆみが生じてしまうのです。
また、人の体はその多くが水分でできているということは皆さんも一度は耳にしたことがあると思いますが、その表面を覆っている皮膚はとにかく乾燥に弱いもの。
そのため、冬場の乾燥時期には皮膚も乾燥し、敏感になるため、体がかゆくなりやすくなるのですね。
かゆみはかくとおさまるのはどうしてなのか?
かさぶたはなぜかゆいのか、ということについては、ヒスタミンの放出がその理由であるということはわかりましたが、
では、なぜかゆい場所は、かくとかゆみがおさまるのかというと、
これには「かゆみ」と「痛み」が密接に関係しているということが関係しています。
実は、かゆみとは、言い換えるとすごく弱い痛みのようなものであり、
かゆい場所をかくと、そのかゆみを感じる知覚よりも、痛みを伝える知覚の方が優位となり。
一時的にかゆみが遮断され、痛みだけが脳へと伝えられるようになります。
そのため、かゆい場所は、かくと一時的にそのかゆみがおさまったように感じるのですね。
ただ、これはあくまで一時的な作用によるものなので、そのかゆみが根本から解決したわけではありません。
そのため、蚊に刺されによるかゆみなどが生じた際には、かくのではなく、抗ヒスタミン外用薬などを塗ってかゆみを抑える方が効果的なのです。
実はかさぶたは必要ない?
かさぶたはもちろんあればあったで傷口を保護してくれる大切な存在なわけですが、
実は、最近の医療分野ではこのかさぶたは、
必ずしもあった方が良いというものではない
ということがわかってきており、
ならばかさぶたができてしまう前に、絆創膏のような創傷被覆材で傷口を保護してしまった方が、傷の治りも早く、綺麗に治るということがわかってきています。
そして、そういった治療方法が、近年話題の
「湿潤療法」と呼ばれているものです。
以前は、傷口は乾燥させ、かさぶたを作らせた方が良いとさえ考えられていましたが、
実は最近では、傷口を乾燥させるというのはNGであり、
実は傷口を乾燥させてしまうと、生きている細胞までもが死んでしまうのです。
そのため、もし怪我をしてしまったら、傷口を水で良く洗い、より発効果の高い創傷被覆材で傷口を保護するというのが近年の治療の主流になってきています。
また、もし擦り傷などができてしまった場合には、
消毒液さえも使わない方が良いと言われています。
これは、先ほども言った通り、正常な細胞までもがその消毒液によって死滅させられてしまう恐れがあるためです。
過去には普通であると考えられていた傷治療のセオリーが、近年になってことごとく誤りであったと考えられるようになってきているわけですね。
ちなみに、軽い傷には唾をつけておけば治るなんて言うことがずっと昔から言われていますが、傷口を潤しておいた方が良いという理論からすると、これは非常に理にかなっていることなんですね。
それゆえに、自然界では傷ついた子供や仲間の傷口をなめるという行為が色々な動物で見られます。
そういう動物たちは、その仕組みを本能的に理解しているのかもしれませんね。
まとめ
今回の記事では、かさぶたはなぜかゆいのか、そのかゆみの理由について解説しました。
傷口がかゆくなるということは傷が治りかけている1つのサインでもあるわけですが、ここでかいてしまうとまた傷口が開いてしまう恐れがありますので要注意ですね。
また、傷口は乾燥させない方が良いとする「湿潤治療」は、乾燥させないようにするのであれば何をしても良いわけではありません。
例えば、傷口をラップでぐるぐる巻きにすると、確かに傷口は湿潤しますが、空気が通らない上に、余分な浸出液も溜まることになるので、下手をすると菌が大量に繁殖してしまう恐れもあるそうです。
そのため、もしそのような怪我をしてしまった場合には、傷が乾燥する前に、「キズパワーパッド」のような専門の製品を使って傷を保護するようにしましょう。