我々人間は、男性と女性が性行為を行い、
精子と卵子が結合して
「受精卵」が出来上がった結果、
それでようやく1つの命を作りだすことができます。
このように、雄と雌が互いにその遺伝子を半分ずつ出し合い生命を誕生させる方法は多くの生物で見られる生殖方法であり、このような生殖方法を、
「有性生殖」と言います。
ただ、この有性生殖には、単に雄と雌が互いに遺伝子を分け与える方法というだけでは説明ができないものもあります。
それが、「単為生殖」と呼ばれる方法です。
実は、雄と雌とに分かれている生物には様々なものがいますが、中には
交尾を行うことなく子供を作り出せる
という特殊な生殖方法を採用するものもおり、そのような生殖方法を単為生殖というのです。
では、この単為生殖とは具体的にはどのような仕組みの方法なのか?
今回の記事では、単為生殖を行うことが確認されている
「七面鳥」を例に、
- 有性生殖
- 単為生殖
- 単為発生
- 両性生殖
- 無性生殖
この辺りの語句が持つ意味についてわかりやすく解説します。
有性生殖とは?まずは単為生殖と両性生殖の違いと「単為発生」について解説!
まず、
「有性生殖」とはそもそも何かというと、
これは性別があるがゆえに可能な生殖方法であるといえます。
例えば人間は男性と女性とに分かれていますが、それゆえに行う生殖方法はもちろん有性生殖です。
一方、これに対して存在する
「無性生殖」と呼ばれる方法は、
例えばアメーバのような生命体が、独自の細胞を分裂させ、全く同じクローン体を作り出すような生殖方法のことを言います。これは、虫や動物のような、複雑な体をもつ生物ではなかなか考えられない方法です。
ただ、その人間や鳥類、昆虫のような動物が採用する
「有性生殖」にもいくつかまた方法があり、
例えば、人間のような雄と雌が精子と卵子を出し合って子供を作り出す方法を
「両性生殖」というのですが、
中には、雄と雌という区別がありながら、時に雌が交尾を行うことなく子供を作りだせる場合もあり、
これを、
「単為生殖」というのです。
つまり、両性生殖も、単為生殖も、有性生殖の一種という考え方ができます。
そして、単為生殖の場合は、雌の持つ卵細胞が、
精子との受精を経ることなく分裂(発生)していくので、
これを「単為発生」といいます。
では、その単為生殖、単為発生の仕組みを七面鳥を例に見ていきましょう。
七面鳥で解説!単為生殖の仕組みと特徴とは?
さて、それではこの七面鳥を例に単為生殖の仕組みを解説していきたい…
と思ったのですが(笑)、
この七面鳥が行う単為生殖は今まで本当に数少ない例しか観察されていない(しかも飼育下でしか観察されておらず、自然界では観察されていない)非常に珍しいケースであり、これに関しては未解明な部分が多すぎて、どうもわかりやすく説明できる気がしない。
ただ、単為生殖を行う生物は自然界には沢山いて、七面鳥は、鳥類でありながら、その単為生殖という珍しい特殊な性質をまだ失っていない生物、という見方ができるといいます。
つまり、その他の鳥類や、我々人間はその進化の過程で単為生殖という生殖方法を放棄してしまったものの、
七面鳥はその進化の過程でその単為生殖という方法を手放さなかったかなり特殊な進化の仕方を遂げた生物である
といえるんですね。
では、その単為生殖とはどのような方法なのかというと、
それをしばしば行う生物として知られている、ミツバチを例に説明したいと思います。
まず、ミツバチにももちろん雄と雌という区別がありますが、(雌は女王バチ)
ミツバチは合計で32本の染色体を持っていて、
これが「両性生殖(雌と雄による生殖)」を行う場合には、
- 雌は16本の染色体を持った卵子を作り
- 雄は16本の染色体を持った精子を作ります。
そして、それらを結合させることによって受精卵ができ、32本の染色体をもつ1個体が誕生するというわけです。
しかし、このミツバチは雄との交尾無しに単為生殖を行う場合があるのですが、
その場合は、その雌の女王バチが作った16本の染色体しか持たない卵細胞が、1つの個体になるべく分裂を開始します。
つまり、ミツバチの巣の中をのぞいてみると、そこには32本の染色体をもつミツバチと、16本の染色体しか持たないミツバチの、大きく分けて2種類のハチがいるということなんですね。
そして、非常に興味深いのは、
この単為生殖により、単為発生したミツバチは、
絶対に雄になるということです。
つまり、ミツバチは単為生殖と両性生殖とを使い分けることによって、雄と雌を産み分けることができるというわけなんですね。
そして、このような単為生殖を行う生物として他に知られているのが、
例えば、春になるとどこからともなく現れる
「アリ」です。
上の画像でひときわ大きなアリが、女王アリです。
ただ、アリは実はハチの仲間なので、これらが単為生殖をするのも不思議なことではありません。
人間でも単為生殖は可能なのか?
結論から言うと、人間の女性が性行為なしにいきなり子供を身ごもることは基本的にはありえません。
また、その他の哺乳類でも、その単為生殖が自然界で見られるということはなく、哺乳類は基本的に交尾を行い、精子と卵子から半数ずつ染色体をもらわなければ、新しい個体を発生させることはできません。
しかし、実は例えば人間は、
絶対に46本そろわないと生命として誕生できないのかというと、そうでもありません。
現に、世界には1本欠損して45本の染色体しか持たずに生まれてくるような方もいます。ターナー症候群として生まれてくる女性がまさにその1つの例です。
しかも、実は例えば女性が卵子に託す23本の染色体には、人間が1人発生するために必要な情報というものがほぼすべて書かれているのです。
そして、例えば46本の染色体を持っていたとしても、その中に組み込まれている遺伝子がすべて発現しているわけではなく、母親からもらった遺伝子が発現している部分もあれば、父親からもらった遺伝子が発現している部分もあります。
だからこそ、母親に似ている部分もあれば、父親に似ている部分もあるのです。
例えば、母親が金髪で、父親が黒髪であった場合、子供が金髪で生まれてくれば、父親から受け継いだ遺伝子の一部は抑制されているということになります。発現が起こらない遺伝子には、メチル化という処理を行うことによってその発現をしないようにしていると考えられています。
なので、この仕組みが分かってくると
必ずしも精子というものは必要ではない
という見方ができます。
しかし、もし雄と雌が本当に要らないというのであれば、女性2人でも46本の染色体になるので、子供ができるということになりますが、
実は過去には、
その2つの卵細胞を組み合わせることによって1個体のマウスを誕生させることにも成功しています。
このマウスは「KAGUYA」と名付けられました。
なので、もしこの世界から男性が減っていき、ほぼ絶滅に追い込まれてしまった場合や、
世界の環境が急激に変化していき、人間が絶滅に追い込まれた場合、
もしかすると、人間の女性の一部が、単為生殖の仕組みを獲得するかもしれません。
女性は二卵性双生児を作り出すときは2つの卵細胞が排出されていますが、それらが突然変異でくっついて1つの個体になる可能性も、もしかするとあるのかもしれませんね。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)
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