※いったいなぜ!?脳も神経もないのに迷路を解く「粘菌」の謎

私たちは普段、哺乳類や爬虫類、昆虫など、はっきりと生物であることがわかり、素早く動くものにしかあまり注目しませんが、

実は皆さんのご家庭の庭や、近くの林などに出かければ、そこにはある興味深い特徴を持った生き物がいるかもしれません。

それが、

粘菌(ねんきん)」

と呼ばれているもの。

コケやきのこ、はたまたカビのようにも思えるこの奇妙な物体は、実は少しずつ少しずつ動いています。よく、ハイキングなどに出かけると、枯れ木などにもくっついていることがあるのですが、皆さんも気にしたことがないだけでおそらく1度は見たことがあるでしょう。

この粘菌は、その大きさから言ってかなりの数の多細胞からできているようにも思えますが、実は大きな細胞1個の中に、核を沢山持っているという、

多核体」という構造をとっています。

私たち人間やその他の哺乳類は、基本的に1個の細胞の中に1個の核を持ち、その細胞が何十兆も集まって1つの構造をとっています。

この核とは、染色体を保存しておくための部屋であり、人間ならその中に23対の染色体を保存しています。

しかし、粘菌は細胞1個の構造の中に核を沢山作り出し、1個の細胞として存在しているのです。なので、上の写真の黄色い物体は、これ1つで1つの細胞なのです。

核が増えることによってその大きさが増すので、それによってゲル状の細胞質も増えていき、流動的な生き物になります。また、同種の個体と出会うと融合もします。

そして、驚くべきところはそれだけではなく、この粘菌はその特徴ゆえにアメーバに近い生物であるとも言われているのですが、人間などとはかけ離れた生物であるため、神経のような構造を持たないものの、

知性を持ち、学習能力があることが分かっています。

そして、この粘菌はその知性によって、迷路を解くという驚くべき特徴があることが発見されました。これは一体なぜなのか、詳しく解説します。

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目次

脳や神経もないのに迷路を解く「粘菌」いったいなぜなのか?

この粘菌は、およそ人間やその他の多細胞生物とはかけ離れた生物であり、脳や神経などの複雑な構造を持っていません。

しかし、これを迷路の中に放つと、いったん全体に広がったのち、スタートとゴールを見つけると、その最短距離になるよう再び体を変形させ、細い管のような形になります。

その様子は、以下の動画でご覧ください。

この動画では、最初粘菌が迷路全体に広がっていますが、2か所にそのエサとなるものを置いておくと、その2か所を把握したのちに、全体に広がっていた体を収束させ、実に効率よくエサを摂取できる形になります。

粘菌がなぜこのような学習能力を持っているのかということについては、いまだに謎が多く、はっきりと分かった答えはありません。細胞内にも、互いに連絡しあうような特殊な構造が無いのです。

しかし、この粘菌の学習能力は、迷路を解くだけにはとどまりません。

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粘菌にも好き嫌いがある

粘菌は植物ではなく、立派な生き物です。

なので、普段はゆっくりと動き回っていますが、その途中で、微生物を食べています。先ほどの動画を見ていただいても、これがちゃんとエサを求めて動き回る生き物であるということがわかりますよね。

しかし、この粘菌にもちゃんと好き嫌いがあって、糖やアミノ酸のような、栄養があり、美味しいものには寄っていくものの、

カフェインのような苦いものは自ら避けるのです。

しかし、2016年には、その粘菌はそのカフェインにも、次第に慣れるということがわかりました。これはやはり学習能力があるということを意味します。

そして、驚くべきことに、そのカフェインに慣れた個体が別の個体と融合すると、その個体もカフェインに慣れた様子を示します。つまり、その「記憶」を共有し、本当に1つの個体となってしまうのです。

さらに、この粘菌や紫外線などを避ける傾向があり、臭いにさえも気が付きます。このように、非常に単純な構造でしかないにもかかわらず、粘菌は人間と同じように様々な感覚器官を全身に持っているのです。

粘菌は分類が難しい生物

突然ですが、皆さんはキノコが好きですか?

スーパーマーケットに行けば必ずと言ってよいほど置いてあるキノコですが、実はそんなきのこは、植物ではなく、

菌類」の仲間です。

キノコが菌類といってもいまいちピンとこないと思いますが、実はキノコの正体は、非常に小さな糸状の菌類であり、これが子孫を残すために集合して塊となったものが、キノコなのです。このキノコは

子実体(しじつたい)」

とも言います。

なので、そのキノコの中身を顕微鏡でのぞいてみると、それは細い糸状の菌類が集まってできているということがわかります。そして、糸状菌は寄り集まってキノコになった後、そのきのこから「胞子」と呼ばれるものを飛ばして、子孫を残すのです。

では、なぜこんな話をしたのかというと、実は今回お話しした粘菌も、

その子実体を作るのです。

なので、粘菌はその流動的な体を動かして移動し、微生物を食べるという動物的な性質を持ちながら、小型の子実体を作り、胞子によって繁殖するという菌類とも考えられる性質を持っているため、その分類がどこに含まれるのか、今でも議論が続いている非常に興味深い存在なのです。

まとめ

今回の記事では、脳や神経などの構造を全く持たないにも関わらず、記憶をもつことができ、学習能力がある粘菌についてまとめました。

これらがなぜ学習を行うことができるのかということはいまだに未解明な部分が非常に多いようですが、脳が無いのに、何がその記憶を保存する役割を担っているのかというのは非常に気になりますよね。

しかし、実は過去には、ある生物の研究において非常に興味深い結果が得られたことが報告されています。

そのある生物とは、例えば10片に切り分けると、それぞれが本体となって復活するという驚異的な再生能力を持つ万能細胞からできている

プラナリア」です。

このプラナリアは、実はそれを切り分けても、

それぞれが昔1匹だった頃の記憶を共有している可能性があるということが分かっています。

また、科学的な根拠はないものの、過去には内臓移植を受けた方が、内臓のドナーとなった人物の記憶を一部受け継いでいたというニュースが世間を驚かせたことがあります。内臓を提供されたのち、意味は分からないもののある言葉が頭から離れず、実はそれは生前ドナーとなった人物が妻との合言葉にしていた言葉だったのです。

なので、もしかすると私たちの体の中にさえ、脳以外にも記憶を保持しておくことができる何らかのメカニズムが存在しているのかもしれません。

それでは最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)

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