※クローンはテロメアが短い?がん細胞との関連は?

映画「スター・ウォーズ」シリーズでは、同じ顔をしたクローン人間によって組織された部隊「クローン軍」が登場し、

まだ「ダース・ベイダー」になってしまう前のジェダイの騎士「アナキン・スカイウォーカー」は、そのクローン軍を引き連れて、ドゥークー伯爵や、グリーヴァス将軍らが率いる分離主義勢力と闘いを繰り広げるというストーリーがあるのですが、

そういうクローン人間は、実はもはや映画の中だけの話ではなく、今の技術を持ってすればかなり高い確率で作り出せるであろうと考えられています。

実際、今年2018年の1月24日には、中国科学院にて、世界では初となる「霊長類」のクローンである「カニクイザル」のクローンが2体誕生し話題となりました。

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また、世界で初となる哺乳類のクローンは、1996年に誕生した「ドリー」と名付けられた羊というのは有名な話ですが、

実はそのドリーは、通常の羊に比べてその半分程度の寿命しか生きなかったことから、長い間、クローンとして作り出された動物は、普通に生まれた生命よりも短命になるという理論が提唱されてきました。

そしてその理由が、クローンとして生まれてくる動物は、染色体の端の部分である「テロメア」という領域が生まれつき短くなってしまうからであるというもの。

このテロメアは細胞分裂を繰り返すたびに短くなり、これが老化の1つの原因であると考えられているのですが、

例えば、6歳の羊の体細胞から取り出した細胞核を使ってクローンを作り出した場合、そのクローン羊は、生まれた瞬間に既に細胞の年齢自体は6歳であるため、長く生きられないのではないかと考えられていたのです。

ということで今回の記事では、そのクローンとテロメアの関係、およびテロメアとがん細胞の関係について詳しく解説していきたいと思います。

「クローンはテロメアが短い」は本当か?

結論から申し上げますと、クローンは生まれつきテロメアが短いため、短命であるという説は、今から約2年前の2016年の7月に発表された論文でほぼ完全に否定されました。

この論文の著者は、そのクローン羊のドリーが短命であった理由を探るために、実際にドリーと同じ手法で誕生した13頭の羊を対象として調査を行い、

さらにその内の4頭は、ドリーの姉妹にあたる羊で、それぞれ、デビー、デニス、ダイアナ、デイジーと名付けられています。この4頭のクローン羊は、ドリーを誕生させるために使用された冷凍組織と全く同じものを利用して作り出されたので、遺伝情報的にはまったくドリーと同じとされる存在です。

ちなみに、ドリーはそのドナーとなった羊の種類「フィン・ドーセット」の平均寿命がおよそ10歳前後であるところ、6歳まで生きたところで、肺炎を患ったことから、安楽死処置によって亡くなりました。そのため、その6歳という寿命で老衰のようなかたちで亡くなったわけではありません。

しかし、このドリーはその種の羊としては比較的若い段階で、よく年老いた羊に診られる関節炎などを発症していたことから、先に説明したテロメア短縮による短命説が流れることとなったのです。

しかし、このドリーと同じ遺伝子を持った4頭の羊は2007年に誕生したのですが、その後2016年7月、つまり論文が提出された当時(つまり約9歳)でも、同時期に生まれた普通の羊同様に健康的に生きていたため、結果この長きにわたる研究によって、ドリーのテロメア短縮による短命説は否定されることとなりました。

また、昨年2017年には、ついに4頭の羊は10歳という年齢を迎えました。これによって、クローンの短命説は完全に否定されたといっていいでしょう。

そもそも、テロメアとは何か?

長きにわたる研究によって、テロメアの短縮によるクローンの短命説は否定されたわけですが、

そもそも、その「テロメアとは何か」という部分がよくわかっていないと、今回の話もいまいちよくわからないのではないかと思いますので、ここで、そもそもテロメアとは一体どのようなものなのかということについて簡単に解説します。

まず、このテロメアというものについて理解するためには、そもそも「DNAとは何か」というところから理解する必要があるのですが、このDNAについては、皆さんもその構造をなんとなく知っていると思います。

DNAは、以下の図に示すような2本の鎖がつながりあい、らせん構造を作りながら伸びているもので、具体的な言い方をすると、このDNAとは様々な「遺伝情報」を記録した「塩基配列」です。

この2本の鎖は、各鎖に並んだある特定の「塩基」同士がつながることによって「塩基対」という構造を作りながらつながっているのですが、

なんと、人間のDNAは、「30億塩基対で1セット」であるということがわかっており、その30億並んだ塩基対のうちの、

「ここからここまではAを形成する遺伝情報」

「ここからここまではBを形成する遺伝情報」

という感じで、その配列がずらっとならんでいるということになります。

ただ、このDNAは、ただ直線的に伸びているだけでは非常に邪魔になってしまうので、「ヒストン」というものに巻き付きながら、最終的に「X型」に近いようなある特定の形を形成します。

そして、これがいわゆる「染色体」といわれているものです。

そして、その染色体は、さらに私たちの細胞の中の「核」という場所に保存されており、細胞が分裂するときには、まずはこの染色体を新たに作るところから始まります。

さて、文字だけ見ていても少しわかりづらいと思いますので、今説明したことを図に表すと、以下のようになりますので参考にしてください。

遺伝情報を記録した長いらせん状の塩基配列「DNA」は、それをヒストンというものに巻き付けながら「染色体」の構造を形成し、その染色体は「細胞核」の中に保存されている、ということを上の図は示しています。

そして、今回お話ししている「テロメア」というものは、染色体の端っこの部分、もっと詳しく言うと、その染色体を形成しているDNAの端の部分のことを言います。そのDNAの端にある特定の長さの塩基配列を、テロメアというのです。

そして、私たちの体にある体細胞は、実はその多くは約50回しか分裂することができず、その50回という分裂を、約100年かけて行います。(最大寿命は約120年とされている)

私たちの体は約37兆個の細胞からできていますが、実はその細胞は、毎日毎日分裂をしているわけではないのです。(頻繁に分裂する細胞もありますが、体細胞の多くは約50回といわれており、これを「ヘイフリック限界」といいます。)

そして、この約50回という限度が、まさにそのテロメアの短縮によって決まってくるところであり、私たちがその細胞内に持っている染色体のテロメア部分は、その細胞分裂を行い、新たな染色体を作るたびに徐々に短くなってくるといわれています。

そして、そのテロメアがある一定の長さにまで短くなると、その細胞はそれ以上染色体の複製を行うことができなくなり、分裂することを辞めてしまいます。こうして、生命はその寿命を迎えるのです。

そして、こういう部分がわかったうえで先ほどの話を思い出すと、確かに、ドリーが短命であるのは、そのテロメアが短くなっていたからではないかといわれても納得できるのではないでしょうか?

ドリーはある羊の体細胞をもとに作り出された羊ですが、そのドナーとなった羊はすでに6歳を迎えていたため、その細胞年齢も、まさに6歳を迎えていたのです。

細胞というと、新たに作り出されたものは何もかもが新しいのではないかと思ってしまいますが、実はその中にある染色体は、ちゃんと年を取っているということなんですね。

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テロメアとがん細胞との関連とは?

ここまでの話を聞いていた方の中には、細胞は分裂のたびにそのDNAの一部を失っていくと聞き、

なぜそれで大丈夫なのか?と思った方もいるのではないでしょうか?

DNAは、人がその特徴を保つための遺伝情報が書かれた大事なもの。

それが分裂のたびに一部失われていくなんて、よくよく考えるとかなり怖いことですよね?

もしかすると、いきなり違う動物に変化してしまってもおかしくないようにさえ思えます。

しかし、実はこのテロメアという領域は、その遺伝的な情報にはほとんど影響のない、特に意味のない繰り返し配列であるということがこれまでの研究からわかっています。

さらに言えば、そのテロメアとは、まさにその重要な領域を守るために存在する、余分な塩基配列といっても良い部分なのです。なので、これが多少短くなった程度では、細胞は問題なくその分裂を行うことができます。

しかし、そんな私たちの体にある細胞は、そのテロメアがある程度まで短くなると、その細胞分裂を行えなくなり、それがまさに「ヘイフリック限界」といわれているものなのですが、

これは、細胞分裂を行えなくなるというよりは、これ以上行うとDNAの重要な部分にまでその影響が及んでしまうため、細胞自身が自ら死を選ぶという方が正しいです。

逆に、もしそのまま細胞が分裂を開始してしまったとしたら、その新しくできた細胞は、体からの統制を無視してしまう「がん細胞」になってしまう可能性があるのです。

がん細胞とは、よく細胞内の染色体が傷つくことによって発生するなんてことを耳にしますが、まさにそういう無理のある細胞分裂は、そのがん細胞を新たに作り出してしまう恐れがあるのです。

だからこそ、細胞は仕方なく細胞死を選び、体中でその細胞死を選ぶ細胞が増えてくると、人は生命活動を維持できなくなります。

ちなみに、よく放射線を被ばくすると体に良くないといいますが、これは、その放射線は体を通り抜ける際に染色体を傷つけてしまうという特徴があるためです。

そのため、放射線を浴びると、染色体が傷ついてしまった細胞は次に分裂するときにうまく分裂ができず、がん細胞になってしまう可能性があります。もしくは、分裂そのものができません。

そして、例えば核実験施設で、事故などによって大量の放射線を全身に浴びてしまうと、その人の体の中では体中の細胞内の染色体がズタズタの状態となってしまい、新たな細胞が作られなくなってしまいます。

そのため、そういう「急性被ばく」してしまった人は、即死はしませんが、それから数か月程度経つと、新しい細胞が作られないために、命を落としてしまうのです。

まとめ

今回の記事では、クローンはテロメアが短いという説に関する説明と、そのテロメアとがん細胞の関連について解説しました。

ただ、今回がん細胞については少ししか触れませんでしたが、実はこのがん細胞の中には、分裂をしてもテロメアが短くならないという驚きの能力を獲得するがん細胞もいます。

そして、その能力を得たがん細胞だけが、いわゆる私たちがよく知る「腫瘍」というものにまで大きくなる細胞群を作り出してしまうのです。

これについては、以下の記事を参考にして下さい。

⇒若返りのカギを握る「テロメア」をわかりやすく解説!

それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました!

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