※若返りのカギを握る「テロメア」をわかりやすく解説!

皆さんは、最近話題になっている「テロメア」というものをご存知でしょうか?

このテロメアとは、細胞の中に保存されている「染色体」の端っこの部分。

細胞は、分裂のたびにそのテロメア領域を少しずつ失っていき、やがて、ある一定の長さまでそのテロメアが短くなると、人の細胞はそれ以上の分裂を行うことができないようになっています。

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しかし、実はそのテロメアは、ある酵素の働きによって修復が可能であるということも近年わかってきており、

この酵素の働きをコントロールすることができれば、人の細胞は無限に分裂できるようになり、全ての人類の夢でもある「若返り」を実現することができるかもしれないのです。

ということで今回の記事では、その若返りのカギを握るテロメアについてわかりやすく解説していきたいと思います。

目次

人類の若返りのカギを握るテロメア!その概要をわかりやすく解説!

まず、そもそもテロメアが何かを理解するためには、「DNA」とは何かというところから説明しなければなりません。

DNAについては、皆さんもそれがどのようなものかというのはなんとなくわかっていることでしょう。このDNAは、2本の鎖がらせん状に連なって構成されている「遺伝情報」を保存している「塩基配列」です。

具体的には、

  • アデニン(表記:A)
  • チミン (表記:T)
  • グアニン(表記:G)
  • シトシン(表記:C)

という4つの塩基が配列することでこのDNAができており、

さらに2本の鎖は互いに結合しているのですが、その結合の相手は

「A」は「T」と結合し、

「G」は「C」と結合する

というように既に決まっています。

このような関係を「塩基対」というのですが、人間のDNAは、実に約30億塩基対という長さで1セットとなっており、どんな人間も、その30億の塩基対のうち99.9%は一致していることがわかっています。

つまり、よく犯罪などの調査に利用されているDNA鑑定とは、その人間のDNAの0.1%の部分を見ているのです。さらに言えば、この0.1%の部分の違いによって、人の顔、目の色、髪の色などは変化していることになります。

たったそれだけの違いで本当にそんな変わるの?と思ってしまいますが、

単純に計算してみても、30億のうちの0.1%は、300万塩基対ということになります。この数値を見てみると、確かにそれ位の変化があってもおかしくありませんよね。

と、ここで話を戻しますが、人の細胞核内に存在する「染色体」というものは、このらせん状のDNAが、さらにヒストンというものに巻き付きながら、「X型」のような形になって保存されているもののことを言います。

つまり、ここまでの説明をまとめると、細胞核の中に存在している染色体の正体は、以下の図のようなものということになります。

「DNA」が綺麗な形に格納されたものが、「染色体」

さらに、その「染色体」を保存しているのが「細胞核」です。

私たちの体は、こういった細胞が計約37兆個集まって構成されており、細胞分列を繰り返しながら、その一定の細胞量を保つことで、体の機能、形を保っています。

そして、細胞が分裂をするときには、この細胞核内の染色体を新たに複製するところからその分裂がスタートします。

そして、今回お話しするテロメアとは、この染色体を構成しているDNAの端の一定の長さの塩基配列のことを言います。

この端の部分は、実は人間の遺伝情報にはあまり関係しない特に意味のない繰り返し配列であり、少しくらい短くなっても、その細胞分裂には特に影響しません。

しかし、細胞分裂を何度も繰り返し、そのテロメアがある程度まで短くなってしまうと、その細胞はそれ以上分裂を行うと癌細胞などに変異してしまう可能性などを察知し、自ら死ぬことを選びます。これが「アポトーシス」というもの。

そして、体の中でこういった細胞分裂がそれ以上できない細胞が増えてくると、次第に体の臓器などは機能しなくなり、人は死に至ります。特に、老衰で亡くなる場合というのは、その体を構成している細胞がこのように老化してしまった時なのです。

体細胞が分裂できる回数は計約50回

体の中には色々な細胞がありますし、その他にも様々な要因が絡んできますので、この理論がすべてに当てはまるわけではないという前提で聞いていただきたいのですが、

私たちの皮膚などを構成している体細胞は、基本的にその分裂回数は約50回程度であるといわれており、その50回という回数を、数十年~約百年にわたって消費していくのです。

具体的には、人の体細胞の最大寿命は120年程度といわれており、その50回という回数は、その理論を打ち立てた人の名前をとって「ヘイフリック限界」と言われています。

ただ、この120年はあくまで最大の寿命で、寝不足、ストレス、食事の内容、このようなものによってその細胞寿命が短くなることもわかっており、これが人によって寿命が異なる1つの理由でもあるのです。

また、その50回という回数も同じ周期で行われるわけではなく、例えば年を取ってくると、その間隔は段々と長くなってきます。だからこそ、年を取ると細胞は自然と古いものの割合が増し、肌の張りは失われていってしまうという訳なんです。もちろん、これがそのすべてという訳ではありませんけどね。

ただ、この理論で行くと、もしその細胞の分裂回数を増やすことができれば、人類はもっと長生きできるということになり、さらに言えば若返りさえできるようになる可能性があるということになります。

そこで、テロメアが短くならないようにする、さらには分裂のたびに失われていくテロメア領域を修復することができれば、体細胞は死を選ばなくて済むという話になりますが、

実は今から約30年前に、このテロメアは、どうやら「テロメラーゼ」という酵素の働きによって修復されるということが判明しています。

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テロメアを修復する「テロメラーゼ」の謎

このテロメラーゼを発見をしたカリフォルニア大学の「キャロル・W・グライダー」氏と「エリザベス・H・ブラックバーン」氏は、その一連の研究内容が評価され、

2009年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

研究の世界でいうところの30年前とは実はまだまだ最近のことと考えられるようなものであり、テロメラーゼに関する謎は、これから何代にもわたって読み解かれていくものだと思いますが。

それでも、現時点で、このテロメラーゼを発現した細胞の中にはほぼ無限の分裂機能を得るものもいることがわかっており、実際にそれを若返りや長寿のために利用しようとする研究は既に行われています。

ちなみに、皆さんは「プロジェリア」という病気をご存知でしょうか?

この病気は「早老症」とも呼ばれている染色体異常が原因とされている病気であり、この病気の患者は、普通の人よりも早く年を取って亡くなってしまうのですが、

実は、このプロジェリアこそ、そのテロメアが関係している病気であるということがわかっています。

具体的には、このプロジェリアとして生まれてくる人の染色体は、生まれたときからそのテロメア領域が普通の方に比べて短いのです。そのため、普通の人よりもその細胞分裂回数に限度があり、早く亡くなってしまいます。

なので、そのテロメアを修復するテロメラーゼに関する研究が進めば、プロジェリアの患者も今よりもっと長く生きることができる可能性があるのです。

テロメラーゼと癌細胞の関係

しかし、それだけテロメラーゼがすごいものであるのであれば、もっと世間で騒がれても良いと思う人は少なくないのではないでしょうか?

テロメラーゼは細胞を無限に分裂させる可能性を秘めているかもしれないわけですから、まさにメリットしかないもののように感じますよね。

ちなみに、実は私たちの人間の体細胞には、このテロメラーゼを発現するための遺伝子というものがすでに組み込まれています。

そう、実は人間は、その酵素をすでに体の中に持っていると言えるのです。

しかし、私たちの体細胞は、そのテロメラーゼを発現させ、テロメアを伸ばすことによってその50回という限界を超えようとはしません。

それはいったいなぜなのか、というと、

実は、テロメラーゼを無理やり発現させてしまうと、人間の体細胞は、癌細胞へと変異してしまう可能性があるのです。

癌というと、今の医療ではまだ治療が難しい病気ですが、実は癌という病気で見られる「腫瘍」は、まさにそのテロメラーゼを発現させてしまった結果、無限の分裂能を獲得することに成功してしまった細胞群のなれの果ての姿なのです。

つまり、テロメラーゼという酵素は、人の寿命を延ばす可能性がある一方で、癌細胞の増殖を促進させ、寿命を縮める可能性も秘めているという、まさに表裏一体の存在と言えます。

だからこそ、テロメラーゼというものは必ずしもメリットだけがあるという訳ではなく、それを使うことによって副作用が出る可能性も決して低くないと考えられているのです。

ただ、そのテロメラーゼが長寿、若返りの1つの鍵を握っているのは確かで、人間がこの酵素をうまく利用できるまでにはまだまだ時間がかかるかもしれませんが、

いつか人類は本当に、200年、500年、果ては無限に近いような寿命を獲得している日が来ているかもしれません。

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