自然界ではしばしば同属同士の争いが起こりますが、中には、非常に珍しい理由から熾烈な争いを繰り広げる生物たちがいます。
それが、海の中でひらひらと泳いでいる
「ヒラムシ」と呼ばれる生物です。
磯の転石下にへばりついてるペラペラ生物。ヒラムシだ!プラナリアと同じ仲間で、鮮やかな種類も多いが高知によくいるのは写真のようにわりと地味。目にする機会も多いがいかんせん採集し辛い。シュルシュルっと意外と素早く動き、泳ぎも上手いため活かしに入れ損ねてよく逃げられる。あとよく破れる。 pic.twitter.com/taVkdqLqkV
— ゆうじ (@sea_slug_0509) 2018年2月28日
このヒラムシは、その性別、すなわちオスメスを決めるために戦いを繰り広げるのですが、
その方法が実にユニークで、現代のフェンシングのように、
自分の体のある一部をうちつけあうのです。
そして、そのある一部というのが、なんとお互いの生殖器、
すなわち「ペニス」です。
なので、その光景は非常に面白いもので、
その戦いは、
「ペニスフェンシング」と呼ばれています。(笑)
そこで今回の記事では、そのヒラムシの生態と、そのフェンシングの様子を動画も交えて解説いたします。
性転換?オスメスを決めるためにフェンシングを行う「ヒラムシ」とは?
オスメスを決めるためにフェンシングを行うというと、
ヒラムシは、性転換を起こすのか?と思ってしまいますが、
実はヒラムシは、その体の中にオスとメスの両方の生殖器を持っている
「雌雄同体」
と呼ばれる生物の仲間です。
これを初めて聞いた方からすると、非常に驚くべきことのように感じられると思いますが、
実は雌雄同体の生物は自然界に数多く存在しており、我々の身近な場所にも住んでいます。
例えば、普段見かけることができることができる雌雄胴体の生物の中で最も身近なものが、
おそらく、「ナメクジ」です。
このナメクジや、その仲間であるカタツムリは、その体内にオスメス両方の生殖器を持っており、性別という区別がありません。
では、もしナメクジが交尾をするときには、はたしてどちらが父親となり、どちらが母親になるのかというと、
実はナメクジは、2匹が交尾をするときにはお互いが父親となって相手に精子を与え、両方が母親となって子供を産みます。
まさに雌雄同体。ナメクジやカタツムリは、なんと父親でもあり母親でもある生物なのです。
一方ヒラムシはというと、こちらはお互いにペニスを撃ちあい、ペニスを刺されてしまった方が、メスとなって、子孫を残します。
つまり、その性行為の後に、性別が一時決まってしまうというわけですね。
ヒラムシのフェンシングの様子をとらえた動画がこちら!
ヒラムシの行うフェンシング、
通称「ペニスフェンシング」は、思った以上にハードな戦いです。
以下の動画では、1分20秒あたりから、そのフェンシングが始まります。
普通、生物の交尾といえば、オスがメスの決まった場所に精子を与えるのが一般的ですが、
なんと、ヒラムシはそんなのお構いなしに、
お腹や背中など隙のある場所をめがけて自らの剣を刺しに行きます。
そして、この戦いに敗れ、体の中に精子を注入されてしまった個体は、母親となって子供を産むのです。
一方勝利した方のヒラムシは、また別の個体を探し、フェンシングの試合を繰り広げます(笑)
雌雄同体の生き物に見られる不思議な特徴
体の中に、オスの生殖器と、メスの生殖器を持っているなんて、
我々人間からするとまるで考えられないような生態ですが、
実は、このオスメス両方の性質を持つ雌雄同体の生物は、時に驚くべき習性を見せることがあります。
それが、
「自家受精」
と呼ばれるものです。
実は、雌雄同体の生物、例えばカタツムリは、体の中に精子も卵子も持っているため、
時にはその2つを受精させ、たった1匹だけで卵を産み、子孫を残すことがあります。
ただ、普通はカタツムリも2匹の個体が交尾を行うことによって子孫を残すのですが、なかなか交尾の相手に出会えなかったり、例えば1匹だけのカタツムリを飼育していたりすると、何とか子孫を残そうとして、稀にこの自家受精を起こすことがあるのです。
ヒラムシの場合は、その習性から言って自家受精が起こる可能性はおそらく低いと考えられます。実際、過去にそのような報告はされていないようです。
ただ、よく見られるカタツムリでさえ稀にしか起こさない現象なので、そこがまた不思議で興味深いですよね。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)!
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