今年2018年1月24日、中国科学院からある驚きの発表があり話題となりました。
その発表とは、
なんとクローン研究の結果、
「霊長類(霊長目)」としては初となる、まったく同じ遺伝子を持った、
「カニクイザル」のクローンが2匹誕生したというのです。
中国科学院神経科学研究所の孫強チームは5年間に及ぶ努力の結果、クローン技術では霊長類を生み出せないという世界の難題を解決することに成功した。この技術を利用し、科学研究チームは今後1年の内に、ゲノム編集と遺伝的背景が同一であるモデル猿を多く育てる。(編集D)#ローン猿 pic.twitter.com/WHe5iptWoi
— 人民中国雑誌社 (@PeopleChina) 2018年1月26日
哺乳類(哺乳鋼)として初となるクローン動物が誕生したのは、今から約20年前の1996年。
この年、羊の体細胞から取り出した核を未受精卵と融合させることによって、初めてのクローン動物である羊が誕生し、
この羊は「ドリー」と名付けられ大きな話題となりました。
ただ、このような進歩は、いずれ人のクローンを誕生させてしまう恐れがあるとして、
日本では、西暦2000年から、その人のクローンの作成については法律で禁止しました。
しかし、人以外の動物のクローン研究については禁止していない国も多く、
中国でも今回霊長類のクローンが誕生してしまったので、
これでまた一歩、人間のクローンを誕生させるための技術もまた前進してしまったといえますが、
しかし、同じ霊長類とは言え、実は、人と非常に近い存在といわれているチンパンジーでさえ、
異種交配をさせてもその結果雑種は誕生しないだろうと言われています。
そこで今回の記事では、その人と動物の異種交配の結果、雑種が存在しないのはなぜなのかということについて詳しく解説します。
人と動物の異種交配の結果「雑種」が誕生しないのはなぜなのか?
そもそも、人とその他の動物が異種交配すること自体今ではあまり考えられないことですが、
実は以前、1900年代前半には実際にそのような研究を試みている研究者もいたようです。
しかし、その結果人と動物のキメラは誕生することはありませんでした。
実際、もしそんな生き物が誕生していたらもっと話題になっていてもおかしくない話ですが、皆さんもそんな話は聞いたことがありませんよね?
では、なぜそのような雑種は存在しないのかというと、
それは、例え人とチンパンジーがいくら霊長類の中でかなり近い存在であっても、
その遺伝子レベルで見てみると、この2種は実際にはかなり大きな違いがあるからです。
人間とチンパンジーは、「霊長目」という分類の中で、さらに「ヒト科」に分類されるという意味では非常に近い存在なのですが、
チンパンジーは
「チンパンジー属」
人は
「ヒト属」に分類される動物であり、
この属が違うと、基本的にその異種交配では雑種は誕生しないといわれています。
例えば、同じカブトムシと呼ばれるような昆虫類でも、異なる国のもの同士で雑種が誕生しないのはそのためです。
重要なのは「染色体の数」ではない
人間と動物の間で異種交配の結果雑種ができないという理由を考えた時、
その原因が「染色体の数」にあるのではないかと考える方もいるようですが、
実際、その染色体の数というもの自体はその雑種の誕生を妨げている決定的な障害ではありません。
例えば、人は計46本の染色体を細胞核の中に持っていますが、
その46本の染色体を持っている動物は、ほかに「ヒラメ」などがいます。
しかし、同じ46本の染色体を持つ動物同士とはいえ、人とヒラメが子供をもうけるなんてことはありません。
ちなみに、人間に近い動物とされている大型類人猿の
チンパンジー、ゴリラ、オランウ-タンなどは、それぞれ48本の染色体を持っています。
これを見ると、動物が人と近い姿形をとる理由はどうやら染色体の数ではないということがわかりますね。
結論を言うと、重要なことはその染色体の数ではなく、
染色体にどのような遺伝子がコードされているのか、ということなんです。
ということで、次にその「遺伝子」とは何かという部分についてみていきましょう。
遺伝子とは何か?
よく、「遺伝子」と「DNA」は混同されて使われている印象を受けますが、この2つは明確には違いがあります。
具体的には、
「DNA」という長い2本差のうち、
「ある範囲にある特定の塩基配列の部分」を
「遺伝子」と呼び、
「その遺伝子を記録したDNAが最終的にきれいにまとまったもの」が、
「染色体」と呼ばれているものなのです。
以下の画像を見ていただければ、ここで何を言いたいのかがわかっていただけると思います。
上に示した長いらせん状の鎖はまさに「DNA」と呼ばれているものですが、
この長い鎖の中で、
- ここからここまではA遺伝子
- ここからここまではB遺伝子
というように区分わけがされており、
最終的に、どのような遺伝子を持っているかというところで、その生物がどのような生物として形作られるのかが決まってくるのです。
そのため、その遺伝子配列が非常によく似ていれば、たとえその染色体の数が最終的に違くとも、異種交配の結果雑種が誕生することはあります。
自然界に存在する雑種について
鋼⇒目⇒科⇒属⇒種
という分類のうち、
人と馬は同じ「哺乳鋼」ではありますが、
- 馬は「ウマ目」
- 人は「サル目(霊長目)」
なので、人と馬はかなり遺伝情報が異なり、異種交配によって雑種が生まれることはありません。
また、人とチンパンジーは、先にも書きましたように、
同じ「哺乳鋼」「霊長目」「ヒト科」ではありますが
そのあとの「属」が違いますので、ここでもまたハイブリッド動物が生まれることはありません。
しかし、この「属」が同じ動物であれば、異種交配の結果雑種が生まれることもあり、
そのような動物は、実は自然界にも存在しています。
そして、例えばその例として挙げられるのが、
カナダの北極圏で見つかった、
「ホッキョクグマ」と「グリズリー」の雑種の
「グローラー・ベア」です。
グリズリー×ホッキョクグマ=グローラーベア
野生下でおこるらしい…すごい pic.twitter.com/6Ukdxb7LRm— かめたけ (@take_tortoise) 2016年11月29日
このように、同じ属同士であれば、その間で子供をもうけることは可能です。
しかし、結論としては現時点で生きている動物の中で、ヒト属に分類されているのは我々人間だけなので、
我々が交配して子供を生み出せるのは、同じ人間だけなのです。
人間に非常に近い動物「ボノボ」
皆さんは、ボノボという動物をご存知でしょうか?
これは、チンパンジー属に分類される、チンパンジーに非常に近い動物なのですが、
時には殺しあうまで戦ってしまうチンパンジーとは違い、
争いを好まず、非常に平和的な動物として知られています。
そして、このボノボはチンパンジーよりもはるかに頭がよく、
過去には、カンジと名付けられたボノボが、そのあまりの知能の高さから一躍有名になりました。
以下の動画は、カンジが火を使い、マシュマロをあぶって食べている様子です。
おそらく私たち人類の祖先も、このように少しずつ知能を発達させて進化していったのでしょうね(^^)
ボノボについては以下の記事で詳しくまとめておりますので、是非ご覧になってみてください。
こちらの記事はいかがですか?⇒【2018】英語を理解する天才ボノボ「カンジ」は現在どうしてる?