医療分野の技術発達はすさまじく、最近では臓器移植も米国では一般的な治療法として取り入れられつつありますが、
それでも、今までの歴史の中で、
「脳移植」に成功した医師、患者はまだ存在していません。
ここ数年以内に、イタリアの神経科医「セルジオ・カナベーロ」氏らのグループによって、世界で初めての頭部移植、脳移植手術が行われる見込みになっていますが、これは倫理的な観点からの反発が多数出ており、成功するにしろしないにしろ、本当に実現するのかということすら懐疑的な意見が多いのが現状です。
しかし、もともと人類はその治療と称して体にメスを入れることすら反対されるような時代を乗り越えてきたわけであり、これからの医療技術発達のためにも、頭部移植、脳移植の実現が可能かどうかというのは、確かに乗り越えるべき課題でしょう。
時代を切り開いてきたのは、いつだって変人や異端として扱われてきた人々です。
【脳移植】死んだ人間が蘇る?セルジオカナベーロ博士が世界初の大実験へ(画像あり) https://t.co/9nM4cNF9Q1 pic.twitter.com/BiDtrylriI
— .. (@minahattori2016) 2017年5月6日
ただ、脳はそこがダメージを受けると、イコール命を落とすことにもなりかねない非常に大切な臓器。
他の臓器と比較しても、
「脳の重要性」は誰もが知っていることですよね。
しかし、脳は肝臓と同じくらい不思議な臓器であり、
時には深刻なダメージを受けても、驚異的な回復を見せることもあります。
さらに、脳へのダメージは、
「天才」を目覚めさせるきっかけになることも分かってきています。
そこで今回の記事では、そんな脳のダメージと回復における不思議な症例を3つご紹介したいと思います。
脳のダメージと天才の目覚め「サヴァン症候群」とは?
皆さんは、「サヴァン症候群」と呼ばれる方々をご存知でしょうか?
このサヴァン症候群とは、例えば自閉症のような人と接するのが苦手な方にしばしばみられる症例であり、
コミュニケーションなどを苦手とするものの、
ある一部の分野において天才的な能力を発揮する人々らのことを言います。
例えば、このサヴァン症候群として非常に有名な人物として挙げられるのが、
2009年に亡くなった「キム・ピーク」という人物。
彼は生きていたころ、人とコミュニケーションをうまくとることができない重度の障害を抱えながらも、
自らが読んだ9000冊以上の本の内容を一字一句完璧に覚えており、
例えばその本のページを指定すれば、まるでそれを読んでいるかのようにすらすらと内容を読み上げることができるという、驚異の記憶力を持っていました。
また、地面に散らばった200本以上ものつまようじの数を一瞬で数えて見せたり、生年月日を伝えれば、一瞬にしてその日が何曜日だったかを当てて見せるなど、彼の脳の処理速度は通常の人では考えられないほどのスピードであり、それゆえに彼の脳がどのようなシステムを構築しているのかということは世界的にも非常に大きな注目を集めました。
しかし、そんな彼の脳は、普通の人とは違った構造をしていることが後になってわかりました。
というのも、普通人間の脳には、右脳と左脳をつなぐ
「脳梁(のうりょう)」という部分があり、
ここで右脳と左脳の情報をやり取りして、様々な処理を施しています。
例えば、人間は話すときには基本的に左脳を機能させ、そこで相手が話した内容を理解したり、自分の話す内容を決めているのですが、この時右脳では、その言葉の抑揚を理解したり、調節したりしています。
つまり、話すときに「コンニチワ、ワタシハ~デス」という平坦な言葉にならないのは、右脳が機能しているおかげなのです。
しかし、脳の写真を撮った結果、
キム・ピーク氏の脳にはその脳梁が生まれつき存在しないということがわかりました。
また、彼は小さいころ、頭部にできたコブが脳を圧迫したことが原因で、
後頭部の小脳の一部にダメージを負っていたのです。
このような様々な要因が絡み合った結果、彼の脳では普通の人間の脳とは違うニューロンネットワークが形成され、常人では考えられないような能力を身に着けたのだと考えられていますが、その謎が結局解明されることはなく、彼は58歳で息を引き取りました。
また、世界には度々脳へのダメージをきっかけに、絵や音楽の才能を開花させる人物たちがおり、そういう方々は後天性のサヴァン症候群であると診断されます。
失った言葉を取り戻した男性
先ほど少しだけ触れましたが、人間は言葉を話すとき、左脳を活発に活動させていることがこれまでの研究からわかっています。
これは、左脳の大脳の部分にある
「言語中枢」
と呼ばれる部分がその機能を果たしており、ここで、相手の話している内容や、自分の話すことを整理しているのです。
しかし、時にはこの言語中枢の部位が、何らかの理由によってダメージを受けてしまうことがあります。例えば、直接的な衝撃などもそうですが、
脳梗塞によっても脳はダメージを受けます。
脳梗塞は脳の血管がつまり、血液の循環に障害が出る病気ですが、この血液循環がうまくいかなくなると、酸素や栄養が不足し、脳の一部が壊死してしまうのです。
そして過去には、この脳梗塞が原因で、言語中枢にダメージを負ってしまった男性がいました。
その名前は明らかにされていませんが、
しかし彼はこのダメージによって、言葉を一時失ってしまったのです。
この場合、鼓膜には異常はないため、その男性は言葉を聞き取ることができますが、相手が何を言っているのか、そしてどうやって話をしたら良いのかということが分からなくなります。まさに、生まれて初めて知らない言語を聞いている感覚になるのだそうです。
しかし、彼はその後、リハビリによって、その失った言葉を取り戻すことに成功したそうです。
しかし、これは彼の左脳の言語中枢の部分の細胞が蘇ったからではありません。
なんと、彼の右脳が、言語中枢の機能の役割を果たすようになったのです。
このように、脳はダメージを負うと、その他の部位がそれを肩代わりするために機能します。脳全体としては失った機能を回復したと考えられるわけですが、とても興味深い現象ですよね。
脳が半分ない少女
この記事の冒頭で、現時点ではまだ脳移植に成功した例はないという話をしましたが、
しかし、過去には「脳摘出」によって、事故から生き残ることに成功したり、難病を克服した方々なら存在しています。
そして、そんな脳摘出という、半世紀前ならなかなか考えられないような方法で奇跡的な回復を遂げたのが、
「ラスムッセン脳炎」という非常に珍しい難病を発症したある少女です。
このラスムッセン脳炎とは、右脳と左脳のどちらかの脳において、慢性的な炎症が生じるようになる根本的な治療法が存在しない難病であり、その炎症の影響によって、その少女は3分に1回のペースでひきつけを起こし、倒れてしまうほど症状は深刻だったといいます。
そこで、医師が治療法として進めたのが、
炎症を起こしている方の脳を丸ごと取り除いてしまう
というもの。
普通なら考えられないような治療法ですが、しかし彼女はこの治療法によって無事その病気を乗り越え、しかも軽度な運動機能障害が残る以外には、ほとんど障害が残ることもなく無事成長することができたのです。
彼女はその手術を行ったときの年齢がまだ3歳であったため、まだ脳が成長途中にある時期であったことから、脳を半分失っても、脳が新たなネットワークを複雑に築くことができたのだろうと考えられています。
今だ解明されない脳の不思議
今回は、脳のダメージと、その後の回復について、3つのの例を挙げて解説しました。
皆さんは、どの例が1番興味深いと思ったでしょうか?
人は、生まれながらにその脳が持つ能力も大体は決まっているかのように思えますが、過去にはプールで頭をぶつけたことをきっかけに音楽的才能を開花させ、音楽家へと転身してしまった方もいます。
人間が必ず持っている臓器でありながら、いまだにその仕組みがよくわかっていない脳。
しかし、この脳の解明が進めば、その情報は電子的な信号でやり取りされているため、
いずれはその「意識」をメモリーカードなどに保存することも可能になるといいます。
大変興味深いですが、そこまで技術が発達するのが少々怖いとも感じますね…!
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)
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