「海棲哺乳類」とはあまり聞きなれない言葉なので、
どこかでこの漢字を見かけて、読み方がいまいちよくわからなかったという方もいるかもしれませんが、
「海棲哺乳類」の読み方は
「かいせいほにゅうるい」です。
おそらく、普通に変換で打ってもなかなか出てこないかと思いますので、それほど常用的な漢字ではないということですね(^-^;
海棲哺乳類の中では、特に「クジラ類」が非常によく知られていますが、
今回の記事では、そんな海棲哺乳類について、これまでの研究からわかっている進化の歴史をまとめたいと思います。
海棲哺乳類にはどんなものがいるの?
海棲哺乳類では
- クジラ
- シャチ
- イルカ
などが非常によく知られていますが、
この3種はどれも
「クジラ目」に属する生物であり、
比較的近代まで共通の祖先をもっていたと考えられています。
その他「クジラ目」以外では
ジュゴンやマナティーを含む
「ジュゴン目」
アシカ、アザラシ、セイウチ、オットセイ、トド、ラッコなどの
「ネコ目」の動物が挙げられますが、
このうち、完全に海洋での生活に特化したものがクジラ目とジュゴン目の生物であり、
アシカやアザラシ等のネコ目の動物は、繁殖期には陸上にも上がるため、現時点ではあくまで海洋での生活にも適応した種類のものであると言えます。
これらの海棲哺乳類は皆最初から海にいたわけではなく、もともとは陸にいた4足歩行の哺乳類でしたが、それらが少しずつ時間をかけながら海での生活に適応し、その姿を変え、進化していきました。
では、なぜ彼らは海での生活に適応していったのでしょうか?
研究から読み解かれた海棲哺乳類の進化の歴史
皆さんは、映画「ジュラシックワールド」を見たことはありますか?
この映画の中には
「モササウルス」という体長が最大で18mにもなる海棲の大型爬虫類の捕食シーンがあるのですが、
そのシーンを少しご覧いただきましょう。
このモササウルスは、今から約6550万年ほど前まで海の中に住んでいましたが、
その約6550万年前に起きた直径10kmの巨大隕石の衝突と、それに伴う気候変動の影響などから、ティラノサウルスを含む陸上の大型恐竜らとともにその姿を消しました。
また、モササウルスだけではなく、それまで海の中に住んでいた大型の生物たちは、その多くがここで絶滅することになったのです。
すると、海の中には、幾分かの「空き」ができることになりました。
すると、そのニッチを埋めるように海に進出していったのが、約5000万年前まで水辺を生息地としていた肉食、または雑食性の哺乳類である
「アンブロケトゥス」であり、
ワニの如く凶暴でカワウソの様に俊敏。そして泳ぎ方は鯨というアンブロケトゥス 新生代始新世初期に生息したクジラの先祖 pic.twitter.com/gCCij3mE2k
— 古代種生物図鑑 (@ittayuu) 2018年6月24日
これが、現代のクジラ類に進化していったと考えられています。
また、これとほぼ同時期にジュゴンやマナティーの祖先も海に進出していったと考えられており、結果的にクジラやジュゴンの仲間が現時点では完全に海での生活に適応した種類のものになりました。
ちなみに、ジュゴンはクジラやイルカよりも「ゾウ」に近縁な動物であり、
それらの祖先は別々に海に進出していきました。
アザラシはなぜ陸に上がるのか?
アザラシやセイウチなどの哺乳類は、クジラやジュゴンほど海での生活に適応しているわけではなく、時には陸地にも上がりますが、
これらの動物の祖先もまた4足歩行の陸生哺乳類であり、今から約2500万年ほど前に、クジラ類やジュゴン類に出遅れる形で海へと進出していきました。
しかし、彼らが完全に海の生活に特化しないのは、海の中にはすでにクジラ類などがいるため、種が繁栄していくための隙間がないからであり、
そもそも、彼らが水陸の境目に進出していったのは、そのクジラ類がその境目を離れ、海へと完全に進出していったためであろうと考えられています。
このように、非常に不思議なことですが、生物たちは自分たちが生き残れそうなニッチを見つけると、そこに適応するように姿かたちを変えていくものなんですね。
まとめ
今回の記事では、「海棲哺乳類」の読み方や、これまでの研究に基づく海棲哺乳類の進化の歴史について解説しました。
ちなみに哺乳類の中では唯一空を飛ぶことができる「コウモリ」も、6550万年前の気候変動によって、翼竜が絶滅し、鳥類が激減したことによって、その隙間を埋めるように空へと進出していきました。
私たちは空を飛びたいと思っても、明日空を飛べるように骨格や皮膚の形状が進化することはありませんが、
なぜ動物は、本能的に自分の進化するべき道を理解できるのか、本当に不思議ですよね(・_・;)
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました!
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