夏の夜に半そで半ズボンで出かけようものなら、問答無用に体を刺しまくる「蚊」
どこかから部屋の中に入り込んでしまったのか、朝起きると足が蚊に刺されていたなんて経験をしたことがある方も少なくないと思いますが、
そんな蚊の中にも、吸血する種類とそうではないものがおり、
しかも、吸血するタイプの蚊でも、血を吸うのはメスの蚊だけなんです。
では、なぜメスの蚊は人間の血を吸うのでしょうか?
今回の記事では、メスの蚊が吸血する理由や、その吸血の仕組みを解説します。
メスの蚊が吸血を行う理由とは?
実は、吸血するタイプの蚊であっても、その蚊は成虫になるとすぐに吸血を行うようになるわけではありません。
オスの蚊は吸血しないといいましたが、そのオスの蚊は花の蜜などを吸って生活しており、人間には基本的に無害です。
そして、成虫になりたてのメスの蚊も、オスと同様にそういった蜜などから生活に必要な養分を摂取しています。なので、メスの蚊も最初は無害なんです。
しかし、そのメスの蚊は、オスと交尾をすると、それから吸血を行うようになります。
この理由は、産卵に必要な養分を蓄えるためです。花の蜜などからでは摂取できないタンパク質などの養分を、人間やその他の動物から吸血によって摂取する方法を彼らは見出しました。
なので、メスの体には、
「普通の胃袋」と、
「血をためておくための胃袋」とが別に存在しています。
その血液に含まれる養分を分解し、産卵のためのエネルギーに変えるのです。
メスの蚊が吸血を行う仕組みとは?
メスの蚊は、その口にある針を血管にさして吸血を行うのですが、実はその蚊の口の針は1本ではなく、計6本もの針を使っているというから驚きです。
その蚊の吸血の様子を説明した動画がこちら↓蚊のような虫の拡大映像が苦手な方は注意してください。
言葉で説明すると、
蚊の計6本のうち、
2本は皮膚を切り裂くのに使われ、
2本はその皮膚を支えるのに使われ、
1本は血液を吸うのに用いられ、
もう1本は、痛みに気づかれないようにする麻酔液を注入するのに使われます。
実は非常に複雑な仕組みになっている蚊の吸血方法ですが、その進化の過程でどのようにしてその術を身に着けたのでしょうか。不思議ですね。
ちなみに、その麻酔液である唾液がアレルギー反応の原因になるために、蚊に刺されると皮膚にかゆみが残ってしまいます。
チクッとなるのは嫌ですが、かゆみが残るのも嫌ですよね…。
蚊が存在するメリット
蚊が存在することは「百害あって一利無し」
と言いたいところですが、そんな蚊も実は生態系の維持には欠かせない存在の1つであり、蚊がまるっきりいなくなってしまうと、困ることも出てきます。
例えば、蚊にはそれより少しだけ上位に存在する生物にとってはエサとして非常に重要な存在です。つまり、「非捕食者」になることが、彼らの役割の1つなのです。
その蚊を食べた生物をまた他の生物が食べ、それをまた何かが食べ、その食物連鎖の上に我々人類が経っています。ただ、そんな人類も自然界に丸腰で放たれたらたちまち動物のエサになってしまいますが。
具体的には、蚊は成虫になるとトンボやクモといった生物のエサとなり、幼虫の時、つまり「ボウフラ」の時にはタガメなどの水中に住む昆虫や、小魚のエサになっています。
ではここで、じゃあそんな「ボウフラ」は何を食べているのか?というと
ボウフラは、水の中の汚れ、微生物などの、いわゆる「デトリタス」と呼ばれるものを食べて生きています。ボウフラはなんとなく汚れた水たまりにいるイメージですが、そういった水の汚れを食べて綺麗にする役割を担っているのです。
その1匹1匹の働きはわずかなものですが、これが世界中から全くいなくなってしまうと、確かに少し不都合が出てきそうですよね。
その時の環境への影響を予測するのは不可能な話ですが、少なくとも、蚊がいなくなってしまうと、それによってその他の種の生物までその数が減ってしまう可能性があるということは容易に想像がつきます。
蚊が存在するデメリット
ただ、その蚊の存在は、我々人間にとっては害の方が大きいことは間違いありません。
というのも、この蚊は地球上で最も人間の命を奪っていると言える存在だからなんです。なんと、蚊がいることによって命を落としてしまう人々の数は、年間で75万人にもなるといわれています。
そしてその理由が、皆さんもご存知の通り、蚊はその吸血を通して感染症の原因となるウイルスを人から人へと移してしまうからなんです。
2016年にはブラジルでリオオリンピックが開催されましたが、当時ブラジルではその蚊を通じて人に移る「ジカウイルス感染症」が流行しており、オリンピックの観戦のために渡航した人々などを通じて日本へと持ち込まれることが心配されました。
また、2014年には海外渡航歴のない10代の日本人女性が代々木公園で蚊に刺され、「デング熱」を発症したことから、代々木公園内では蚊の一斉駆除が行われました。
このデング熱の原因となるデングウイルスは、妊婦に感染すると胎児に障害を与える影響があることが指摘されていたため、当時は非常に大きな話題として取り上げられました。
そのため、現在では遺伝子を操作したオスの蚊を野生に放ち、交尾の結果生まれた子供が成長できないようにすることによる蚊の撲滅計画などが様々な研究機関で進められています。
特に、感染症の蔓延が問題視されている地域では、実際にその方法が導入され、一部地域では85%も蚊の量を減らすことに成功したようです。
まとめ
今回の記事では、メスの蚊が吸血を行う理由や、その仕組みなどを解説しました。
蚊は、温度の変化に加え、二酸化濃度の変化も敏感に感知します。そのため、蚊はしばしば顔の近くに現れますよね。
また、この蚊は汗のにおいにも反応するため、汗っかきの人は刺されやすい傾向にあるそうです。そのため、女性よりも男性の方が蚊に刺されやすいという研究結果も出ています。
また、最近では虫よけが効かないタイプの蚊も生まれているようで、もしかすると今後蚊はもっと厄介な存在になるかもしれません。
小さい虫や魚にとっては重要な蚊ですが、我々人間にとっては、まさに最も恐れるべき存在ですね。